考えは、何度も同じ道を低徊（ていかい）した揚句（あげく）に、やっとこの局所へ逢着（ほうちゃく）した。

短い細切れの夢のように、意識に入り込んでくる。

昔の記憶が、この炎天に通う微風のように、かなしく、なつかしく、返って来た。

その香りに、条件反射のように俺の胸は切なく湿る。

何気もなく云ったらしい一言が、事件の真相らしいものをチラリと私の頭に閃（ひら）めかしてくれた

混乱を鎮めようと努めていた。頭の中で音がするようだった。組み立てていた仮説が崩れる音だ。

レーダーみたいに、その光の移動を感じ取って

ぞろぞろと群がる蟻のごとくに現れる考え

その時、生まれて初めて経験する、ある不思議な瞬間が訪れた。無残に踏み荒らされた砂漠に、一陣の風が吹き抜け、目の前に一本の真っさらな道が現われた。道の先には光がともり、私を導いていた。その中へ踏み込み、身体を浸してみないではいられない気持にさせる光だった。今自分は、閃きという名の祝福を受けているのだと分かった。

それから発展した別な考えが頭の中をひらめいて光った。