(路線)それは東西の町を結ぶ路線から、北の山側に向かってまさに盲腸のようにはみ出した、たった三つしか駅のない単線だった。他の路線がどれも互いに交差し、合体しながら、地図の先まで延々と続いているのに比べ、それはあまりにも呆気なく短かった。誰かが気紛れに取り付けた余分な突起、といった風情で、終点の駅はどこにつながることもできないまま、ぽつんと取り残されていた。
小川 洋子 / 盲腸線の秘密「口笛の上手な白雪姫」に収録 ページ位置:2% 作品を確認(amazon)
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前後の文章を含んだ引用
......ておいた。大雪の日も、台風の日も、電車が動いている限り、その日課は守られた。一泊で海水浴に行った日と、インフルエンザで幼稚園を休んだ日以外、ひ孫も一緒だった。 それは東西の町を結ぶ路線から、北の山側に向かってまさに盲腸のようにはみ出した、たった三つしか駅のない単線だった。他の路線がどれも互いに交差し、合体しながら、地図の先まで延々と続いているのに比べ、それはあまりにも呆気なく短かった。誰かが気紛れに取り付けた余分な突起、といった風情で、終点の駅はどこにつながることもできないまま、ぽつんと取り残されていた。小豆色をした二両編成の電車が、往復で十分もかからないその突起を行ったり来たりしていた。路線図を見る限り、確かにいつ廃線になったとしても、気に留める人はさほど多く......
単語の意味
風情(ふぜい)
風情・・・自然とかもし出される(いい)雰囲気。その場の風景から自然と感じられる、なんとなく上品で美しい雰囲気。趣(おもむき)。味わい。「風」も「情」も「趣(おもむき)」を意味する字。
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小林多喜二 / 蟹工船
光代はダッシュボードに置かれた道路地図を手に取った。適当なページを捲ると、全面に色とりどりの道が記載されている。オレンジ色の国道、緑色の県道、青い地方道路に、白い路地。まるでここに書かれた無数の道路が、自分と祐一が乗るこの車をがんじがらめにしている網のように思えた。仕事をさぼって好きな人とドライブしているだけなのに、逃げても逃げても道は追いかけてくる。走っても走っても道はどこかへ繋がっている。
吉田修一「悪人」に収録 amazon
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固まった白いクリームのような形の椅子
川上 未映子 / あなたたちの恋愛は瀕死「乳と卵(らん) (文春文庫)」に収録 amazon
五個の時計はどれも 洒落 た感じのプラチナカラーだ。丸みを帯びた角型の小さな文字盤に、少しずつ趣向を変えた 華奢 な金属ベルトがついている。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
暗いロビイには大衆食堂のような安っぽい卓子と椅子が並んでいる
大岡 昇平 / 武蔵野夫人 amazon
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