女は叫んだ。こういう叫声を日本語は「悲鳴」と概称しているが、あまり正確ではない。それは 凡そ「悲」などという人間的感情とは縁のない、獣の声であった。人類は立ち上って 胸腔 を自由に保たないならば、こういう声は出せないであろう。
昇平, 大岡「野火(のび) (新潮文庫)」に収録 ページ位置:43% 作品を確認(amazon)
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悲鳴を上げる・悲痛な叫び
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前後の文章を含んだ引用
......ち上り、銃で扉を排して、彼等の前に出た。 二人は並んで立ち、大きく見開かれた眼が、椰子油の灯を映していた。「パイゲ・コ・ポスポロ(燐寸をくれ)」と私はいった。 女は叫んだ。こういう叫声を日本語は「悲鳴」と概称しているが、あまり正確ではない。それは凡そ「悲」などという人間的感情とは縁のない、獣の声であった。人類は立ち上って胸腔を自由に保たないならば、こういう声は出せないであろう。 女の顔は歪み、なおもきれぎれに叫びながら、眼は私の顔から離れなかった。私の衝動は怒りであった。 私は射った。弾は女の胸にあたったらしい。空色の薄紗の着物に血斑......
単語の意味
胸腔(きょうこう・きょうくう)
叫声(きょうせい)
胸腔・・・体の胸をとりまく骨格の内側で、心臓や肺がある部分。横隔膜に囲まれた空間。「腔」は、「体内で空になっている所」をあらわす字。
叫声・・・叫(さけ)び声。
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悲鳴を上げる・悲痛な叫びの表現・描写・類語(恐怖・不安のカテゴリ)の一覧 ランダム5
悲鳴はすぐには出ない。人々の無言が、透明の、無音の爆発を起こすかのようだ。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
絶望的な声を泰山は発した。翔自身、出したこともないような声である。
池井戸 潤「民王 (文春文庫)」に収録 amazon
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胸で恐怖を感じるときの表現・描写・類語(恐怖・不安のカテゴリ)の一覧 ランダム5
死を前にして胸しめつけられるような感情を味わっている
遠藤周作「沈黙(新潮文庫)」に収録 amazon
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んー……、と思案声を漏らしている。
新海 誠「小説 君の名は。 (角川文庫)」に収録 amazon
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あなたは怖くないの?」 「怖くなんかないさ。」 彼女は黙った。それは僕の答えの存在感を手のひらの上で確かめてみるといったような沈黙だった。
村上春樹「風の歌を聴け (講談社文庫)」に収録 amazon
「おお、お信。よろこんでくれ」 と、息の弾みにも、その欣びを昂 らせて
吉川英治 / 無宿人国記
丸くあいた唇の奥からぴやぴやした声がまろびでる
中 勘助 / 銀の匙 amazon
それ以上言葉を重ねようとはしなかった。
雫井 脩介「火の粉 (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
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