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今はこれでいい気がする。でも同じところをぐるぐるまわっているようにも思える。《…略…》ときどきこうした迷路に入ると何もかもが遠く外側のことに思えて実感や喜びや苦痛が失われる。  私の悲しみも、私の美学も、箱庭の中で展開するだけだ。
吉本 ばなな / 大川端奇譚「とかげ (新潮文庫)」に収録 ページ位置:64% 作品を確認(amazon)
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人生の岐路・人生に迷う
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......思いながら彼は日常にそれをとりいれて人生の重みに溶けていく。 私はそこに飽きて、祭壇を幾つもつくってそのなかに自分をおこうとする。どちらがりこうかわからないが、今はこれでいい気がする。でも同じところをぐるぐるまわっているようにも思える。この迷いはたぶん、すごい豪華な結婚式をして、喜びに泣く両親を見ても、出産してよそにはない自分だけの子供の重みをこの腕に抱いても消えないだろう。 時代のせいなのか、自分の性質のせいなのか、もとはあったものがなくなったのかよくわからない。ときどきこうした迷路に入ると何もかもが遠く外側のことに思えて実感や喜びや苦痛が失われる。 私の悲しみも、私の美学も、箱庭の中で展開するだけだ。……何と半端な存在なのだろう。 果てしなく落込んだ気分になった。 多分、過去の亡霊が最後の力をふるったのだった。暗いチャンネルに巻き込まれたのだ。 土曜日の昼間......
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