暗い家並みに挟まれて細い路地が続いている

普通の通行人のための路ではないような隘路（あいろ）

僕は庭のブロック屛をのりこえて「路地」に下りた。 「路地」とは言っても、それは本来的な意味での路地ではない。正直なところ、それは 何とも 呼びようのない代物なのだ。正確に言えば道ですらない。道というのは入口と出口があって、そこを辿っていけば然るべき場所に行きつける通路のことだ。 　しかし「路地」には入口も出口もなく、それを辿ったところでブロック屛か鉄条網にぶつかるだけのことだ。それは袋小路でさえない。少くとも袋小路には入口というものがあるからだ。近所の人々はその小径をただ便宜的に「路地」と呼んでいるだけの話なのだ。

高度成長期になってかつて空き地であった場所に家が新しく建ちならぶようになってからは、それに押されるような格好で道幅もぐっと狭くなり

家の東側には車一台が通れるほどの側道がある。

雨が降れば泥濘と化する道は天気になると乾いて灰のようになる。

ハンドルがもつれ合うほどびっしりと自転車が並んでいる狭い歩道

国道を通らない抜け道

延々何百哩（マイル）の鉄道は、長蛇の如く野を走り、山を貫き

高速道路が壊滅的な渋滞状態に陥って、足止めを食らっている。