その晩半沢は軀からだのほうが思うようにならなかった。

「私のこと、嫌いになっちゃったのかなあ。このペニス」

EDになって女の子が人形にしか見えなくなる

（女は）彼の股間に手をやり無邪気に微笑むのである。彼は、その刺激を性欲に結びつけようとするのだが成功できずに冷汗を流す。

満州の寒気にやられた正介は、肉体のそこまで萎縮して、冷凍魚なみの不能者（インポテンツ）になっていたのだ。

シロナガスクジラの赤ちゃんのような

ふっくら肥えたお尻は男性好きするかわいらしさ

（ほっそりした女性の腰）まるで腰をがっしりと固めるための成長の一過程が何かの事情でとばされてしまったんじゃないかと思えるくらいの華奢な腰

ティエンは信じられないくらい急激に自分の股間の生き物が膨張して行くのを感じた。

鳥の羽のようにざらついた内臓

階段の真下まで行った時、野呂が足を止め、ゆっくりとわたしのほうに顔を傾けると、わたしの頰に手をあてがってきた。ああ、ここでキスをされるのだな、と思った。 　酔いが感覚を鈍麻させていたために、わたしがそう思ったのと、彼が唇を合わせてきたのはほぼ同時だった。眠ろうとして目を閉じる時のように、わたしはそっと目を閉じた。

四角く切り取られた窓灯りのなかで電話をつかんでいるほっそりした身体つきの男が、無限に遠い存在であるような感じに打たれる。その遠い男と自分とが身体の関係を持っているという現実に 眩暈 に似たものを覚える。頭の芯を甘く 痺れさせるこの眩暈にくらべれば、性行為そのものの快感の有無などいったい何ほどのものだろう。

こうして離れていてふと、私の知っている彼のいいところを思うと、あまりのすばらしさに胸が苦しくなる。その文章の才、礼儀正しさ、行動の大胆さ、おおらかさ、手の形、声の響き……等。 　そして悪いところやずるいところを考えると、あまりの憎しみに息が苦しくなる。私を旅に誘ったりする弱さ、妹の死に対するある種の冷酷さ、ろくに日本に帰らないくせに、来るとなると会いたがるずるさ……等。 　ほかの人にはこんなに感じないひとつひとつの感覚が活性化される。その振幅がそのままその人を思う心のベクトルの大きさだ。人間は苦しい。不完全なひとりが、不完全なひとりを思い丸ごとを受け入れようと苦しむ様は、なぜかそれぞれ胸のうちの 嵐 とは別のところで、ときどき妙に生き生きとしたあるひとつの像を結ぶ。 　人間がかろうじて日々を生きているわけみたいなもの。 　いちめんに咲いた桜並木みたいに大盤振る舞いの美しくやさしいエネルギー。 　たださらさらと花びらが散り、陽がさして風が吹き、はるか続く木々がいっせいに揺れて舞い狂うピンクとすきまの青空の甘い色に圧倒されて立ちつくす。知っている。一度しかなく、一瞬で終わる。でも自分がその一部に永遠に溶け込んでいる。ワンダフル、ブラボー！　そういう瞬間を、人は苦しんでも求める。

サユリを慎重に愛し始めた。彼は、おくれ毛を舌でどかしながら首筋に口を付けた。サユリの吐く息が暖まって来たのを感じると、我慢ができなくなって、彼女を抱く腕に力を込めた。

僕は本を置いて懐中電灯を消し、直子を抱き寄せて口づけした。闇と雨音がやわらかく僕らをくるんでいた。