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麻薬・覚せい剤・ドラッグの表現・描写・類語(事件・事故のカテゴリ)の一覧 ランダム5
部屋では中央に拳程もあるハシシが香炉で焚かれ、立ち込める煙は呼吸のたびに否応なく胸に入ってくる。三十秒もたたないうちに完全に酩酊する。からだ中の毛穴から内臓がドロドロと這い出し、他人の汗やら吐く息が入り込んでくるような錯覚に陥いる。
特に下半身は重い沼につかったように爛れ、口は誰かの器官をくわえたくて、体液を飲み込みたくてムズムズしている。皿に盛られた果物を食べワインを飲むうちに、部屋全体が熱の冒され始めて、自分の皮膚を引き剥がして欲しいと思う。ツルツルした油にまみれている黒人達の肉体を体内に入れて揺すりたいと感じている。
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
(ハシッシを吸ってしばらくすると、)秘密のスイッチをオンにするようなかちんという音が耳元で聞こえ、それから天吾の頭の中で何かがとろりと揺れた。まるで粥を入れたお椀を斜めに傾けたときのような感じだ。脳味噌が揺れているんだ、と天吾は思った。それは天吾にとって初めての体験だった――脳味嗜をひとつの物質として感じること。その粘度を体感すること。(家の外で鳴く)フクロウの深い声が耳から入って、その粥の中に混じり、隙間なく溶け込んでいった。《…略…》彼の脳味噌はとろりと重く、原始の海のように生命の萌芽を湛えていた。しかしそれは彼をどのような地点にも導かなかった。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
オキナワ(人の名)は注射針の先端をライターで炙っている。アルコールで湿した脱脂綿で拭いて消毒してから息を吹き入れ穴が詰まっていないかテストする。《…略…》アルミ箔のヘロインを耳掻きで中央に集め《…略…》スプーンの中に、マッチ棒の頭くらいの量だけ耳掻きでヘロインを入れる。《…略…》スポイトで吸い上げる戦場用の一CC注射器に針を填(は)める。レイ子が蝋燭に火をつけた。注射器で、スプーンの中のヘロインに注意深く水滴を垂らす。《…略…》スプーンを蝋燭に翳(かざ)す。あっという間に水溶液は沸騰する。スプーンは内側に泡と湯気をたて、底は黒い煤で汚れる。オキナワはゆっくりと火から離し、赤ん坊にスープを飲ませる時のように息を吹きかけて冷やす。《…略…》小さくちぎった親指の爪程の脱脂綿をさめた液に浸す。オキナワは湿って重くなった脱脂綿の中に針先を沈めた。かすかな音を出して、ちょうど赤ん坊が乳を吸うような音で透明な液体が細いガラス管に少しずつ溜まっていく。吸い終わると唇を舌で舐めながら、オキナワは少しだけスポイトを押し、注射器内の空気を抜く。《…略…》レイ子は口を尖らせてオキナワを睨み皮紐で僕の腕をきつく絞り上げた。左拳を握りしめると太い血管が浮き出る。アルコールで二、三度擦るとオキナワは濡れている針先を脹れた血管目がけて皮膚に沈めた。握りしめていた拳を開くとシリンダー内に黒っぽい僕の血が逆流してくる。ほらほらほら、と言いながらオキナワはスポイトを静かに押し、血と混じり合ったヘロインを一気に僕の中に入れた。
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
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「事件・事故」カテゴリからランダム5
屋台骨が火の中へ、紙細工のようにヒラヒラと呑まれて消える
山崎 豊子 / 暖簾 amazon
豆でも挽き立てるような騒ぎが湧き上る。
金 史良 / 光の中に amazon
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