思わず顔をあげると、すばやい指がコーヒーカップを持つようなしかたで十和子の顎を捉える。水島が背後から覆いかぶさって唇を吸う。《…略…》すぐに湯のように味のない唾液が水島から十和子に流れ下ってくる。強く押さえつけてくる指が頬の肉ごと奥歯の間に食い込んで、口を閉じることができない。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 ページ位置:33% 作品を確認(amazon)
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キス・口づけ
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前後の文章を含んだ引用
......続けている。 肩に置かれた水島の手に右手を重ねる。水島の頬が、それから唇が頭頂部の髪に触れ、耳朶を探りあてようと滑り降りてくる。髪の根に湿った息の熱気がこもる。思わず顔をあげると、すばやい指がコーヒーカップを持つようなしかたで十和子の顎を捉える。水島が背後から覆いかぶさって唇を吸う。一瞬だけ、爛れた舌の赤い粒々が頭に浮かぶが、すぐに湯のように味のない唾液が水島から十和子に流れ下ってくる。強く押さえつけてくる指が頬の肉ごと奥歯の間に食い込んで、口を閉じることができない。 突然電話が鳴る。水島の唇が唐突に離れる。椅子にすわっていなければ十和子はその場にくずおれたかもしれない。 一歩身体を離した水島と黙ってにらみ合ったまま、互いに......
単語の意味
頬(ほお・ほほ)
顎・頤・腭(あご)
頬・・・顔の一部。顔の両脇で、口の真横にあるやわらかい部分。ほっぺ。ほっぺた。
顎・頤・腭・・・1.口の上下の、歯の生えている部分で、話したり物を噛んだりするのに役立つ器官。
2.下あご。頤(おとがい)。
3. 釣り針の先に逆向きにつけた返しのこと。釣り針のかかり。鐖・逆鉤・逆鈎(あぐ)。
4.機械や道具などで、物をつかんだり引っ張ったりする開閉部分。
5.食事。食料。まかない。食費。
6.口をきくこと。物言い。おしゃべり。
2.下あご。頤(おとがい)。
3. 釣り針の先に逆向きにつけた返しのこと。釣り針のかかり。鐖・逆鉤・逆鈎(あぐ)。
4.機械や道具などで、物をつかんだり引っ張ったりする開閉部分。
5.食事。食料。まかない。食費。
6.口をきくこと。物言い。おしゃべり。
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キス・口づけの表現・描写・類語(恋愛のカテゴリ)の一覧 ランダム5
蓮の花が開くときのにするのに似た大きな接吻の音
阿部 昭 / 千年 (1977年) amazon
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(相手の体に触れるごとに)愛しさと呼ぶべきようなものが、自分の体の奥の奥をめいっぱい満たしていく。
朝井 リョウ「武道館 (文春文庫)」に収録 amazon
(浮気のメールを偶然見てしまう)画面を操作してやっていると、丁度、携帯にラインの着信があった。上部にバナーが表示されて、見る気もなかったのに目に触れてしまった。 「昨日の夜」という言葉と、子供向けのシールのようなハートの絵文字がちりばめられたそのメッセージを、城戸は反射的に、何か壊れやすいものの上に落ちている埃のように、親指でそっと払い除けた。スワイプして画面から消えたあとも、送り主である香織の上司の名前が頭に残っていた。しかし、それはまだ、脳の中の「短期記憶」と呼ばれる領域に留まっているに過ぎないはずだった。そして、ありがたいことに、それはほどなく、覚える必要のないこととして、跡形もなく消え去ってしまうはずだった。 画面が暗転すると、城戸は、何事もなかったかのように、それをテーブルの上に伏せて置いた。
平野啓一郎「ある男」に収録 amazon
なまあたたかいものが胸にさした。
松本 清張 / 与えられた生「松本清張ジャンル別作品集(3) 美術ミステリ (双葉文庫)」に収録 amazon
(クレープ屋の前でデートの待ち合わせ)わたしたちはいつも、甘いクリームとバニラエッセンスの匂いの中で会った。
小川洋子 / 冷めない紅茶「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
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