ふかえりはゆっくり前屈みになり、彼の顔に顔を近づけ、天吾の唇に唇をつけた。半開きだった唇が大きく開き、彼女の柔らかい舌が天吾の口の中に入ってきた。良い香りのする舌だった。言葉にならない言葉を、そこに刻まれた秘密のコードをそれは執拗に探し求めた。天吾の舌も無意識のうちにその動きに応えていた。まるで冬眠から目覚めたばかりの二匹の若い蛇が、互いの匂いを頼りに春の草原で絡み合い、貧り合うみたいに。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 作品を確認(amazon)
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キス・口づけ
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単語の意味
草原(そうげん・くさはら)
蛇(へび)
草原・・・一面に草が生えている広い野原。
蛇・・・ひょろ長い筒状で足がないという独特の姿の爬虫類の総称。鱗(うろこ)でおおわれた体をくねらせて進む。先が二分した長い舌を持つ。脱皮を繰り返し、毒を持つものも多い。不吉なもの、執念深いものとして嫌悪の対象となる場合が多いが、一方で、神やその使いとして信仰する場合もある。
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子猫のように体をくねらせてキスを投げる
岡田 なおこ / 薫ing(イング) amazon
彼女は目を開けたまま唇を寄せ、彼もそれに目を開けたまま答えた。お互いがお互いの睫毛の羽ばたきを味わった後、彼女の方から唇を離した。
山田詠美「新装版 ハーレムワールド (講談社文庫)」に収録 amazon
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(鉄柱に縛りつける)背筋の先端に大きな関節を一つポコンと露 わに見せていた。
小林多喜二 / 蟹工船
今、彼女は快楽の琴線を剝き出しにされ、堪能している。シンイチにはそれが解った。何故なら、快楽を訴える言葉は時折、英語に変ったから。たぶん、こちらが彼女の本来の快楽の言語なのだ。
山田詠美「新装版 ハーレムワールド (講談社文庫)」に収録 amazon
接吻の味が十一氏の心に清涼な香水をそそいでくれるようだった。
林 芙美子 / 茶色の目「林芙美子全集〈第15巻〉茶色の目 (1952年)」に収録 amazon
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