秋もそろそろ終わり近くになり、 埃 まじりのうすら寒い風が、群立するビルとビルの鋭角的な 隙間 から 湧き立って来た。

秋刀魚（さんま）を焼く匂いは季節の呼び声だ。

九月の声を聞き、記録的な猛暑にも翳りが見え始めていた。

冬がすぐそこまできているというのに、ただゆっくり道を歩いているだけで汗ばんでくるような小春日和

風があまり冷たくなく、一年中、こんな気候だったらいいのにというような陽気だった。

山の動物も、冬ごもりの準備で忙しく走りまわっているようだ。

（秋の夕方）山と山に狭ばめられた初秋の空も、蕭殺（しょうさつ）とした墨いろの中に鬼気をもって、なんともいい難い悽愴（せいそう）

（赤や黄に染まりかけた紅葉が混ざった庭）庭に千代紙のようにちりばめられた赤

しかし初秋の夜空に浮かんだ月はくっきりと明るく、この季節特有の内省的な温かみを持っていた。《…略…》その穏やかな自然の光は、人の心を癒し鎮めてくれる。澄んだ水の流れや、優しい木の葉のそよぎが、人の心を癒し鎮めてくれるのと同じように。

九月中ごろの、ようやく風がさわやかになってきた週末