会話にべつだんの悪意はないのだが、このところおたがいの口に出る言葉は魔物のようだった。
浅田次郎 / うらぼんえ「鉄道員(ぽっぽや) (集英社文庫)」に収録 ページ位置:30% 作品を確認(amazon)
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尖った声・とげのある言葉や口調
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......言ってたくせに、本当に大丈夫なのかよ」「何とかするわ。私はここのおじいちゃんに可愛がってもらったんだし、子供もいないし」 鏡の中で夫はネクタイを結ぶ手を止めた。会話にべつだんの悪意はないのだが、このところおたがいの口に出る言葉は魔物のようだった。「先に行ってるぞ。おまえ、着付けできるのか、ひとりで」「できるわよ」と、紐を口にくわえたままちえ子は突慳貪に答えた。夫は梯子段を軋ませて階下に降りて行った。 蔵......
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