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......会えなくなりました。ではまた」　いいの？　と菜穂子が気の毒そうな顔をして聞いてきた。　わたしはうなずいた。　あんな男、と言ってみたかった。だが、言えなかった。　その時わたしは、自分がどれほど野呂という男を愛し、欲しがり、自分だけを見ていてほしいと願っていたか、はっきりと知った。認めた。　理由などどうでもいい。彼はわたしの人生そのものだったのだ。８　猜疑心の芽生え　その人の名は千晶といった。江波千晶。　野呂が『ユリイカ』の店頭に並べるために、美術関係の稀覯本を探していた時、その方面に詳しい専門家から紹介......