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女のふっくらとした重味のある乳房を柔らかく握って見て、云いようのない快感を感じた。それは何か値うちのあるものに触れている感じだった。軽く揺すると、気持のいい重さが てのひら に感ぜられる。それを何と云い現わしていいか分らなかった。 「豊年だ! 豊年だ!」と云った。  そう云いながら、彼は幾度となくそれを揺す 振った。何か知れなかった。が、とにかくそれは彼の空虚を満たしてくれる、何かしら唯一の貴重な物、その象徴として彼には感ぜられるのであった。
直哉, 志賀「暗夜行路 (新潮文庫)」に収録 ページ位置:43% 作品を確認(amazon)
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乳房・乳首 愛撫(前戯)
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前後の文章を含んだ引用
......誘惑的だった。然し澄ましていると、いかにも平々凡々だった。多少裏切られたような心持で彼は一切前日の話は持出さなかった。女も忘れたように云わなかった。 彼は然し、女のふっくらとした重味のある乳房を柔らかく握って見て、云いようのない快感を感じた。それは何か値うちのあるものに触れている感じだった。軽く揺すると、気持のいい重さが掌に感ぜられる。それを何と云い現わしていいか分らなかった。「豊年だ! 豊年だ!」と云った。 そう云いながら、彼は幾度となくそれを揺す振った。何か知れなかった。が、とにかくそれは彼の空虚を満たしてくれる、何かしら唯一の貴重な物、その象徴として彼には感ぜられるのであった。後篇第三一 謙作の大森の生活は予期に反し、全く失敗に終った。彼は恐ろしく惨めな気持に絶えず追いつめられ、追いつめられ、そして安々とは息もつけない心の状態で来たが......
単語の意味
象徴(しょうちょう)
手の平・掌(てのひら)
快感(かいかん)
象徴・・・シンボル。ある意味を表す記号。具体的でない考えや物事、分かりやすく説明するための用いるもの(こと)。
手の平・掌・・・手首から先の、物を握ったときに内側になる面。掌(たなごころ)。
快感・・・快(こころよ)い感じ。満ち足りた感じ。いい気持ち。
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弱い弾力のたりない彼女の胸の肌
野間 宏 / 顔の中の赤い月「暗い絵・顔の中の赤い月 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
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胸に触れる。和服が、もどかしいというように私の手が荒く動く
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Aカップでも隙間があまって、体育の着替えのときは恥ずかしかった。
村田 沙耶香「しろいろの街の、その骨の体温の」に収録 amazon
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熱い熱い焼き栗 大好き 愛しあっている私たちに冬はない
石井 好子「東京の空の下オムレツのにおいは流れる (河出文庫)」に収録 amazon関連カテラブラブ・恋は盲目
サユリに取り憑かれることが今の自分のすべてなんだから。
山田詠美「新装版 ハーレムワールド (講談社文庫)」に収録 amazon
(カメラ越しに少女に見つめられて)牛河はその少女から目をそらせることができなくなっていた。世界全体がそこでいったん動きを止められたみたいだ。風もなく、音は空気を震わせることをやめていた。(《…略…》少女は去ったが)牛河はなぜか床から腰を上げられなかった。身体が痺れたようになっている。ファインダー越しに送り込まれた彼女の鋭い視線が、行動を起こすのに必要とされる力を、牛河の身体からそっくり奪っていったようだ。(《…略…》少女が見えなくなると、)床を這うようにカメラの前を離れ、壁にもたれた。そして身体に正常な力が戻るのを待った。セブンスターを口にくわえ、ライターで火をつけた。煙を深々と吸い込んだ。しかし煙草には味がなかった。力はなかなか回復しなかった。いつまでも手脚に痺れが残っていた。そして気がつくと、彼の中には奇妙なスペースが生じていた。それは純粋な空洞だった。その空間が意味するのはただ欠落であり、おそらくは無だった。牛河は自分自身の内部に生まれたその見覚えのない空洞に腰を下ろしたまま、そこから立ち上がることができなかった。胸に鈍い痛みが感じられたが、正確に表現すればそれは痛みではない。欠落と非欠落との接点に生じる圧力差のようなものだ。彼はその空洞の底に長いあいだ座り込んでいた。壁にもたれ、味のない煙草を吸っていた。そのスペースはさっき出て行った少女があとに残していったものだった。《…略…》少女に、全身を文字通り揺さぶられていることに気づいた。彼女のみじろぎひとつしない深く鋭い視線によって、身体のみならず牛河という存在そのものが根本から揺さぶられているのだ。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
人工呼吸のようなキス
島田 雅彦 / ドンナ・アンナ amazon
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