(記念写真)92500という彼のベスト・スコアを記念すべく、鼠(人名)とピンボール台の記念写真を撮らされたことがある。鼠はピンボール台のわきにもたれかかってにっこりと笑い、ピンボール台も92500という数字をはじき出したままにっこりと笑っていた。《…略…》鼠はまるで第二次大戦の撃墜王のように見えた。そしてピンボール台は古い戦闘機のように見えた。整備士がプロペラを手でまわし、飛び上がった後でパイロットが風防をパタンと閉めるような戦闘機だ。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 ページ位置:59% 作品を確認(amazon)
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前後の文章を含んだ引用
......部に二枚のフリッパーが付いている。ソリッドステートがピンボールの世界にインフレーションを持ち込む以前の、平和な良き時代のモデルだ。鼠がピンボールに狂っていた頃、92500という彼のベスト・スコアを記念すべく、鼠とピンボール台の記念写真を撮らされたことがある。鼠はピンボール台のわきにもたれかかってにっこりと笑い、ピンボール台も92500という数字をはじき出したままにっこりと笑っていた。それは僕がコダックのポケット・カメラで撮った唯一の心暖まる写真であった。鼠はまるで第二次大戦の撃墜王のように見えた。そしてピンボール台は古い戦闘機のように見えた。整備士がプロペラを手でまわし、飛び上がった後でパイロットが風防をパタンと閉めるような戦闘機だ。92500という数字が鼠とピンボール台を結びつけ、そこはかとない親密な雰囲気をかもしだしていた。 週に一度、ピンボール会社の集金人兼修理人がジェイズ・バーにやっ......
単語の意味
鼠(ねずみ)
鼠・・・1.ネズミ科の哺乳動物の総称。人家の付近などに住む、敏捷な小動物。繁殖力が高く、食害や伝染病の原因となるため嫌われている。
2.鼠色(ねずみいろ)の略。
3.比喩として、こそこそと悪事を働く者、ひそかに害をなす者のたとえ。
2.鼠色(ねずみいろ)の略。
3.比喩として、こそこそと悪事を働く者、ひそかに害をなす者のたとえ。
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写真の表現・描写・類語(道具・家具のカテゴリ)の一覧 ランダム5
アルバムって、悲しいわよね。みんな若くて。
吉本 ばなな「アムリタ〈上〉 (新潮文庫)」に収録 amazon
(写真の風景)何百回となく写真を通して見ていた風景を実際に目のあたりにするというのは実に奇妙なものだ。奥行きがおそろしく人工的に感じられる。僕がそこに辿りついたというより、誰かが写真にあわせてそこに間にあわせの風景をあわてて作りあげたといった感じだった。
村上 春樹「羊をめぐる冒険」に収録 amazon
(ネガフィルム)黒い裸体に白い縮毛。白い髪に黒い歯の睦子。
山田太一「飛ぶ夢をしばらく見ない」に収録 amazon
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八十パーセントの事実と二十パーセントの省察というのが、日記記述についてのポリシーだ。
村上春樹 / ローマ帝国の崩壊・一八八一年のインディアン蜂起・ ヒットラーのポーランド侵入・そして強風世界「パン屋再襲撃 (文春文庫)」に収録 amazon
降雨の風景ばかりを撮った一冊がとくに気に入って、何度も繰り返し見入る。ページの間から雨のにおいが立ちのぼってくる。樹木やアスファルトを打つ雨滴のざわめきに包まれていると、そのまますうっと写真の街へ入り込んでいけそうな錯覚に襲われる。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
(天眼鏡でのぞくと、)面白いのは、綿ごみである。 羽織っていた女房の茶羽織の 袂 が、半分ひっくり返っていたのを直したときにつまみ上げ、食卓の上にのせて、 仔細 に眺めた。 袂の丸みそっくりの、薄くやわらかいフェルトに見えるが、天眼鏡でのぞくと、さまざまな色の繊維の寄り集りである。 どこからどうして入ったのか、何本かの毛髪らしいものが、一粒の仁丹と、一本の赤い絹糸をからめて半月型を形づくっている。 持ち上げるとこわれそうなねずみ色のそれは、間違って咲いたなにかの花のように見える。 楠は「ウドンゲ」の花というのは、こういうのではないかと思った。 印度 あたりの想像上の花で、たしか三千年に一度咲くという。吉兆とも、凶兆ともいわれている。 ねずみ色の、雲のような、鳥の巣のようなものは花弁である。銀色の小粒と赤い絹糸は、 雄蕊 と 雌蕊 に違いない。
向田邦子 / 耳「思い出トランプ(新潮文庫)」に収録 amazon
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