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(天眼鏡でのぞくと、)面白いのは、綿ごみである。  羽織っていた女房の茶羽織の 袂 が、半分ひっくり返っていたのを直したときにつまみ上げ、食卓の上にのせて、 仔細 に眺めた。  袂の丸みそっくりの、薄くやわらかいフェルトに見えるが、天眼鏡でのぞくと、さまざまな色の繊維の寄り集りである。  どこからどうして入ったのか、何本かの毛髪らしいものが、一粒の仁丹と、一本の赤い絹糸をからめて半月型を形づくっている。  持ち上げるとこわれそうなねずみ色のそれは、間違って咲いたなにかの花のように見える。  楠は「ウドンゲ」の花というのは、こういうのではないかと思った。   印度 あたりの想像上の花で、たしか三千年に一度咲くという。吉兆とも、凶兆ともいわれている。  ねずみ色の、雲のような、鳥の巣のようなものは花弁である。銀色の小粒と赤い絹糸は、 雄蕊 と 雌蕊 に違いない。
向田邦子 / 耳「思い出トランプ(新潮文庫)」に収録 ページ位置:33% 作品を確認(amazon)
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前後の文章を含んだ引用
......なクッションになっている。考えてみれば当り前のことだが、楠は感心した。 辞書を引くときに使う天眼鏡でさまざまなものをのぞいていると、いっときの虫押えになった。 面白いのは、綿ごみである。 羽織っていた女房の茶羽織の袂が、半分ひっくり返っていたのを直したときにつまみ上げ、食卓の上にのせて、仔細に眺めた。 袂の丸みそっくりの、薄くやわらかいフェルトに見えるが、天眼鏡でのぞくと、さまざまな色の繊維の寄り集りである。 どこからどうして入ったのか、何本かの毛髪らしいものが、一粒の仁丹と、一本の赤い絹糸をからめて半月型を形づくっている。 持ち上げるとこわれそうなねずみ色のそれは、間違って咲いたなにかの花のように見える。 楠は「ウドンゲ」の花というのは、こういうのではないかと思った。 印度あたりの想像上の花で、たしか三千年に一度咲くという。吉兆とも、凶兆ともいわれている。 ねずみ色の、雲のような、鳥の巣のようなものは花弁である。銀色の小粒と赤い絹糸は、雄蕊と雌蕊に違いない。 名前も顔も忘れてしまった。 楠がおぼえているのは、その女の子は楠より二つ三つ年下だったこと。半年だか一年だか、ごく短い期間、楠の隣りの家に住んでいたことだけで......
単語の意味
凶兆(きょうちょう)
蕊・蘂(しべ・ずい)
半月(はんげつ)
毛髪(もうはつ)
子細・仔細(しさい)
天眼(てんがん・てんげん)
優曇華(うどんげ)
凶兆・・・よくないことが起こる予告めいたもの。不吉の前兆。⇔吉兆。
蕊・蘂・・・花の生殖器官。雄しべと雌しべ。花の真ん中にあり、花粉のやり取りをして実を作る器官。
半月・・・半円の形の月。弦月(げんげつ)。弓張り月。
毛髪・・・人体の毛。とくに、髪の毛。
子細・仔細・・・1.事細かであること。また、そのさま。詳細。
2.物事の詳しい事情。一部始終。
3.一言ではいえない、特別の理由。込み入った事情。
天眼・・・1.仏語。五眼(ごげん)のひとつ。天人が所有している、すべてを見通すことのできる眼(め)。
2.(てんがんと読んで)けいれんで、眼球が吊り上がること。
優曇華・・・1.仏教経典で、伝説上の植物の名前。3000年に一度花が咲き、その時に金輪王が現世に出現するという。
2.イチジクに似た落葉小高木。インド周辺に分布し、果実は食用、葉は家畜のえさになる。小形でつぼ状の花は外から見えにくいため、1が転じたのが名前の由来。
3.草蜉蝣(くさかげろう)が草木の枝葉や天井などに卵を産みつけたもの。一見すると花のように見え、名前の由来は、本来花をつけない植物に花が咲いたように見え、1が転じた。出現は、瑞兆、または凶兆とされることもある。
4.(1が転じて)極めて稀なことのたとえ。
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