もう空襲警報も警戒警報もないようだった。鉛色をおびた低い冬の雲のどこかで絶えず、ごろん、ごろんと鈍い響きがきこえ、時々思いだしたようにパチ、パチと、豆のはじけるような音がした。
遠藤 周作「海と毒薬 (角川文庫)」に収録 ページ位置:21% 作品を確認(amazon)
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空襲・空爆
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前後の文章を含んだ引用
......きあがるのが見え、その小さな竜巻が、むかし田舎者の勝呂の眼を見張らせた福屋デパートを包んでしまう。デパートも内部はすっかり焼けて外郭だけが残っているのである。 もう空襲警報も警戒警報もないようだった。鉛色をおびた低い冬の雲のどこかで絶えず、ごろん、ごろんと鈍い響きがきこえ、時々思いだしたようにパチ、パチと、豆のはじけるような音がした。昨年までは中洲が焼けた、薬院の一帯も焼けたと患者や学生たちは大騒ぎをしていたが、この頃は何処が燃えようが誰も口に出す者は少ない。人々が死のうが、死ぬまいが、気に......
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空襲・空爆の表現・描写・類語(イベントのカテゴリ)の一覧 ランダム5
(F市での空襲)医学部とF市とは二里も離れてるのに窓がふるえるほど重い地ひびきが伝わり、高射砲の 炸裂 する音がパアン、パアンと聞えてきた。灰色の雲の中をB 29 が鈍い眠い音をたてて何時までも飛んでいた。
遠藤 周作「海と毒薬 (角川文庫)」に収録 amazon
(空爆の直後)夕暮になって、やっと敵機が姿を消した。すると、おそろしいほど、あたりは静かになった。空がどす黒くよごれ、耳をすましているとパチ、パチと焼ける音にまじって、鈍いうつろな反響が聞えてくる。最初、ぼくはその反響に気がつかなかったのだ。けれどもその虚ろな 呻き声に似たものは次第にはっきり聞きとれてきたのである。《…略…》それは確かに多くの人間たちの呻き声に似ていた。医者であるぼくはあの呻き声は知っている。恨み悲しみ、悲歎、 呪詛、そうしたものをすべてこめて人々が呻いているならば、それはきっと、こんな音になるにちがいなかった。
遠藤 周作「海と毒薬 (角川文庫)」に収録 amazon
(空襲直後)屋上に登るとF市の東西南北から一斉に白煙がたちのぼっている。煙がうすれるたびにダイダイ色の炎がゆれるのがはっきりと見えた。
遠藤 周作「海と毒薬 (角川文庫)」に収録 amazon
もう空襲警報も警戒警報もないようだった。鉛色をおびた低い冬の雲のどこかで絶えず、ごろん、ごろんと鈍い響きがきこえ、時々思いだしたようにパチ、パチと、豆のはじけるような音がした。
遠藤 周作「海と毒薬 (角川文庫)」に収録 amazon
本館の屋上にのぼると、日ごとにF市の街が小さくなっていくのがよくわかる。実感としては小さくなると言うよりは焼けた部分が黄いろい砂漠のように毎日、拡っていくのだ。
遠藤 周作「海と毒薬 (角川文庫)」に収録 amazon
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参道に並ぶ小さな石灯籠に、火が灯っている。白熱灯をぶらさげた屋台から、威勢のいい呼び声と、おいしそうなにおいがあふれている。
三浦 しをん「神去なあなあ日常 (徳間文庫)」に収録 amazon
(大空襲の焼け跡)人間が焼鳥と同じようにあっちこっちに死んでいる。
坂口 安吾 / 白痴 amazon
夕刊の記事に間に合う時間だ。《…略…》マスコミへの発表のタイミングといい、時間の設定といい、入念に仕組まれた記者会見であることは明らかだった。
翔田 寛「真犯人 (小学館文庫)」に収録 amazon
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