(小説文章のすばらしく印象的な部分)たとえば君が五月の海辺を描写すると、耳もとで風の音が聞こえて、そこに潮の匂いがする。太陽のかすかな暖かさを両腕に感じることができる。たとえば君が煙草の煙に包まれた狭い部屋について書くと、読んでいてほんとうに息苦しくなってくる。目が痛くなってくる。そういう生命のある文章は誰にでも書けるわけじゃないんだ。君の文章には、それ自体が呼吸して動いているような自然な流れと勢いがある。
村上春樹「スプートニクの恋人 (講談社文庫)」に収録 ページ位置:23% 作品を確認(amazon)
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言い得て妙
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前後の文章を含んだ引用
......うの?」「心からそう思う。噓じゃない」とぼくは言った。「ぼくはそういうことで噓はつかない。君がこれまでに書いた文章の中にはすばらしく印象的な部分がたくさんある。たとえば君が五月の海辺を描写すると、耳もとで風の音が聞こえて、そこに潮の匂いがする。太陽のかすかな暖かさを両腕に感じることができる。たとえば君が煙草の煙に包まれた狭い部屋について書くと、読んでいてほんとうに息苦しくなってくる。目が痛くなってくる。そういう生命のある文章は誰にでも書けるわけじゃないんだ。君の文章には、それ自体が呼吸して動いているような自然な流れと勢いがある。今のところそれがまだぴったりとひとつにつながっていかないだけなんだ。ピアノの蓋を閉めることはない」 すみれは10秒か15秒のあいだ黙っていた。「それは慰めとか、......
単語の意味
自体(じたい)
耳元・耳許(みみもと)
息苦しい(いきぐるしい)
自体・・・1.自分のからだ。
2.そのものの本来の性質。それ自身。そのもの。地体(じたい)。多くの場合、名詞の下につく。
2.そのものの本来の性質。それ自身。そのもの。地体(じたい)。多くの場合、名詞の下につく。
耳元・耳許・・・耳の根もと。耳のそば。耳のすぐ近く。耳許の「許」は、「近く」「そば」を意味する。
息苦しい・・・1.息をするのが苦しい。呼吸が苦しい。胸に圧迫感があって息が詰まるような感じである。
2.胸を圧迫されるような、重苦しい感じの雰囲気だ。緊張した空気が漂っていて、軽々しい言動などできそうもない雰囲気だ。
2.胸を圧迫されるような、重苦しい感じの雰囲気だ。緊張した空気が漂っていて、軽々しい言動などできそうもない雰囲気だ。
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言い得て妙の表現・描写・類語(言葉・話のカテゴリ)の一覧 ランダム5
「局」を名乗っていながら局員は十人足らずのちっぽけな所帯で、部屋も薄暗くてひどく狭い。「ブラックボックス」。誰かが口にしたそのネーミングに悠木も深く頷いたことがある。
横山 秀夫「クライマーズ・ハイ (文春文庫)」に収録 amazon
守屋の台詞は大部屋の空気を正確に言い当てていたし、「お祭り感覚」も決して的外れな指摘ではなかった。
横山 秀夫「クライマーズ・ハイ (文春文庫)」に収録 amazon
(小説文章のすばらしく印象的な部分)たとえば君が五月の海辺を描写すると、耳もとで風の音が聞こえて、そこに潮の匂いがする。太陽のかすかな暖かさを両腕に感じることができる。たとえば君が煙草の煙に包まれた狭い部屋について書くと、読んでいてほんとうに息苦しくなってくる。目が痛くなってくる。そういう生命のある文章は誰にでも書けるわけじゃないんだ。君の文章には、それ自体が呼吸して動いているような自然な流れと勢いがある。
村上春樹「スプートニクの恋人 (講談社文庫)」に収録 amazon
口をついて出る言葉言葉がどれもこれも絢爛 な色彩に包まれていた。
有島武郎 / 或る女
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力を入れすぎて最後はペンの先で紙が破れた。
川上 未映子「乳と卵(らん) (文春文庫)」に収録 amazon
鉛筆をなめなめ帳面づけ。
林芙美子 / 新版 放浪記
母はエンピツをなめながら帳面をつけている。
林芙美子 / 新版 放浪記
(メモ書きの筆跡からは)多くのものを感じ取ることができた。鉛筆のかすれた跡からは情熱を、ばつ印には焦りを、力強く引かれた二本のアンダーラインからは確信を。
小川洋子「博士の愛した数式 (新潮文庫)」に収録 amazon
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