彼女が上等な絹の靴下や下着を選んでいるところを見ていると、わたしはなんだかすうっと息苦しくなってきます。額に汗さえにじんでくる。

突き昇ってくる熱の魅力に 抗えない

野呂 に聞いてみたことがある。勃起する時、どんな気持ちになるものなの、と。 　野呂は少し考えたあとで、こう答えた。今ここにたまっている、いまいましいやつを全部、残らず吐き出してしまいたい、っていうのかな、そんな気持ちになるんだよ、と。 　どうしてそれがいまいましいの、とわたしは重ねて聞いた。 　野呂は笑った。そして言った。だってそうじゃないか、精液なんて、吐き出そうが吐き出すまいが、どっちだっていいと頭では思ってるのに、一か所にそれが集まってきて、ひしめいて、マグマみたいに熱くなって、持ち主の考えてることなんか絶対的に無視されるんだからね……。

この勝気な女を動けないように押さえ付けて、快楽の叫びを上げさせたい衝動にかられた

欲望を燃え上がらせ、どくどくと全身の血が滾るのを感じた。 　長く途絶え、忘れかけていた回春の疼き

（別れて）ひとりで道を歩いていると、もう広田さんが恋しかった。別れがたかったんだ、と私は自分の淡い恋のような気持ちを自覚した。

（女性がオルガスムに達した時）女は 瞼 の裏に 虹 が出るというが本当かと尋ねたりする。 　虹は見たことないが、瞼の内側からあかりがともって、ローストビーフの真中の、生焼けのところみたいな色になることはある

ある種の愛が家庭を存続させるのに必要、なのよ。愛ってね、形や言葉ではなく、ある一つの状態なの。発散する力のあり方なの。求める力じゃなくて、与えるほうの力を全員が出してないとだめ。家の中のムードが飢えた 狼の巣みたいになっちゃうのよ。例えば家はね、実際には私が壊したっていうことになるんだけれど、それはきっかけにすぎなくて、私が単独でやったことじゃなくて、前から始まっていたのよ、家中の人々がみんな求めるばっかりになってね。それでも続けて行けるかどうかっていうせとぎわで、何が必要って、そりゃあ、妥協だってひともいるんだろうけれど、私は違ったわ。愛……っていうか、美しい力のある思い出っていうか。その人たちといていい思いをした度合いっていうのか……。そういう空気に対する欲が残っているうちはまだいれるんだと思ったのよね。

（薄暗いスタジオで女が）まるで闇にぬらぬらと光る美しい彫像のように見えた。

野呂を恋しく思う気持ちはふくらむばかりで、それは明らかにわたしを別の人間に変えてしまった。 　恋に関すること以外の話題は、途方もなくつまらないものに感じられた。