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ある種の愛が家庭を存続させるのに必要、なのよ。愛ってね、形や言葉ではなく、ある一つの状態なの。発散する力のあり方なの。求める力じゃなくて、与えるほうの力を全員が出してないとだめ。家の中のムードが飢えた 狼の巣みたいになっちゃうのよ。例えば家はね、実際には私が壊したっていうことになるんだけれど、それはきっかけにすぎなくて、私が単独でやったことじゃなくて、前から始まっていたのよ、家中の人々がみんな求めるばっかりになってね。それでも続けて行けるかどうかっていうせとぎわで、何が必要って、そりゃあ、妥協だってひともいるんだろうけれど、私は違ったわ。愛……っていうか、美しい力のある思い出っていうか。その人たちといていい思いをした度合いっていうのか……。そういう空気に対する欲が残っているうちはまだいれるんだと思ったのよね。
吉本 ばなな「アムリタ〈上〉 (新潮文庫)」に収録 ページ位置:40% 作品を確認(amazon)
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愛する・愛情
家庭・夫婦(家族)の暮らし
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前後の文章を含んだ引用
......なずいた。「それと、愛。」「愛?」 あまりに唐突にそんなことを言うので、おどろいて私は言った。 純子さんは笑った。「私もこんなの恥ずかしくて言いたくはないけど、ある種の愛が家庭を存続させるのに必要、なのよ。愛ってね、形や言葉ではなく、ある一つの状態なの。発散する力のあり方なの。求める力じゃなくて、与えるほうの力を全員が出してないとだめ。家の中のムードが飢えた狼の巣みたいになっちゃうのよ。例えば家はね、実際には私が壊したっていうことになるんだけれど、それはきっかけにすぎなくて、私が単独でやったことじゃなくて、前から始まっていたのよ、家中の人々がみんな求めるばっかりになってね。それでも続けて行けるかどうかっていうせとぎわで、何が必要って、そりゃあ、妥協だってひともいるんだろうけれど、私は違ったわ。愛……っていうか、美しい力のある思い出っていうか。その人たちといていい思いをした度合いっていうのか……。そういう空気に対する欲が残っているうちはまだいれるんだと思ったのよね。」 わかる気がした。 こういうのもまた、一歩間違えると普通のおばさんの告白みたいなんだけれど、目の前で、ライブで聞くと壊す勇気を体験した凄みを感じる。 純子さん......
単語の意味
狼(おおかみ)
狼・・・イヌ科の哺乳動物。形は日本犬に似ており、性格は獰猛な野獣。畑を荒らす動物を捕食するため、日本では神聖視する地域もあった。「大神」が由来。
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愛する・愛情の表現・描写・類語(好きのカテゴリ)の一覧 ランダム5
清らかな小川のように陽の光に美しく輝き、風に吹かれると無数の優しい小波(さざなみ)を立て《…略…》そうしたものをこそ、愛であると思い込んでいたのです。
井上 靖 / 猟銃「猟銃・闘牛 (新潮文庫)」に収録 amazon
(知らない人とセックスしても、好きな人への愛が損われることはないのか?)「チベットにある煩悩の車輪と同じ。車輪が回転すると、外側にある価値や感情は上がったり下がったりする。輝いたり、暗闇に沈んだりする。でも本当の愛は車軸に取りつけられたまま動かない」
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
蝶のようにすべての生命に祝福の接吻を与えながら楽しげに飛び廻る優しい「愛」
長与善郎 / 陸奥直次郎 amazon
とかげ(人名)がコートをはおるのを見るのが好きだ。 靴 を履こうとかがんだときの首が。鏡をのぞくうわめづかいが。いろいろな場面のいろいろなとかげ。死にゆく細胞。生まれ続ける細胞。ほほの張り、つめの白い半月。生きている、水分をたたえて、流れに乗って。それを感じる。彼女の一挙一動に、生きているはずの自分を映し出すことができる。
吉本 ばなな / とかげ「とかげ (新潮文庫)」に収録 amazon
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家庭・夫婦(家族)の暮らしの表現・描写・類語(暮らし・生活のカテゴリ)の一覧 ランダム5
夫婦喧嘩も大っぴらにできないような、不幸な生活
川端 康成 / 雪国 amazon
薄い幕を隔てて触れ合うような、率直さを欠いた生活
落合 恵子 / センチメンタル・シティ amazon
不思議な家族だ、と僕はあらためて思った。宇宙家族。行動派作家と天才女流写真家と霊媒的少女とゲイの書生と詩人のボーイフレンド。やれやれ。僕はこのサイケデリックな拡大家族のなかで一体どういう位置を占め、どういう役割を果たしているのだろう?
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
家事や育児という際限ない日常リアリズムの中に埋没して暮らす
瀬戸内 寂聴 / 愛すること―出家する前のわたし amazon
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「暮らし・生活」カテゴリからランダム5
木部は葉子と別れてから、狂瀾 のような生活に身を任せた。
有島武郎 / 或る女
みんなが一度くらい親から決定的に拒まれたことをどこかでおぼえている。例えばおなかの中で、まだ目もみえないとき。話もできない時。だからもう一度、誰かが自分の親になってくれることを、本当に死にそうな時に物理的に共同責任をおってくれることを、理屈ではなく、ただとにかくむしょうに求めてひとはひとと暮らそうとするのだろう。
吉本 ばなな / 大川端奇譚「とかげ (新潮文庫)」に収録 amazon
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子猫のように体をくねらせてキスを投げる
岡田 なおこ / 薫ing(イング) amazon
サユリの胸は 疼いた。体の奥から溶け出したチョコレートのようなものが拡がり出て来るのが解る。
山田詠美「新装版 ハーレムワールド (講談社文庫)」に収録 amazon
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