溶けたチョコレートみたいにしっくりと混じりあって、ひとつのイメージとして分離不可能になっていて

心はただ渾沌（こんとん）と暗く固まった物のまわりを飽きる事もなく幾度も幾度も左から右に、右から左に回っていた。

グラスの中で氷が溶け、透明な氷がグレープ・ジュースに混っていくのが見えた。不均一な混り方だった。

迷路のようなポケットからキー・ホルダーをとり出し

間口二間の小さな店先が看板で埋まっている態は、日本という小さな島国へ、めったやたらに車輛が、航空機が、商店が、食べもの屋が、酒場がキャバレーが氾濫しているのと、非常によく似ている。

人々が、ヘビのようにうねり歩く

電車からホームに飛び出して、そのまま人の流れに乗って改札を出る

「まるで蜂の巣のようです。それに皆が女王蜂だから……」

人気（ひとげ）のない廊下を歩いて行った。廊下は僕にはホテルよりも監獄らしい感じを与えるものだった。

雨風のために夜はにぎやかな往来もさすがに人通りが絶え絶（だ）えだった。