敵の動きがスローモーション映像を見ているようにゆっくりと見える

クラシック音楽を聴いて楽器の種類と数を当てるように神経を研ぎ澄ます。

手のひらに乗ったままの白木の小箱の重み。知らないふりをしようとしても、神経が集中していた。手先がしびれるようだった。

自分の感覚がどんどん研ぎ澄まされて子供に近くなってくるのがわかる。

常客のひとりが、いつか私に、 「松つぁん（寿司屋のあるじ）は、いのちがけで鮨をにぎっとるからねえ」 　しみじみと、ささやいたことがあった。 　にぎっているときのあるじの両眼は、たしかにするどい。 　全神経を張ってにぎっている感じがするときがある。 　にぎり終えて客の前に出すとき、あるじの顔に、ほっとした微笑が浮ぶ。 　よくはわからぬが、にぎりつづけて一日が終ったときの疲れは相当のものにちがいない。

１００パーセントの出来

とくに心が動かない

あなたは今まで裁判官席という風上から、下々で起こる事件をまさに他人事として裁いていた。ところが今度、急に風向きが変わって自分のところに火の粉が降りかかってきたものだから、びっくりして慌てふためいているわけです

プリンを型から抜くようにストンとあっけなくできる

私のそういうところと、この部屋とこの風景は重なり合って一緒に呼吸しているような気がした。