想像力が不足しているのか、うまくイメージできない

まるではっきりと見届けたもののように思い描かれていた。

東京銀座のレストラン・モナミのテーブルに倚（よ）りかかって、巴里（パリ）のモンパルナスのキャフェをまざまざと想い浮べることは、店の設備の上からも、客種の違いからも、随分無理な心理の働かせ方なのだが、かの女のロマン性にかかるとそれが易々と出来た。 　ふだんから、かの女は地球上の土地を、自分の気持の親疎によって、実際の位置と違った地理に置き換えていた。つまり感情的にかの女独得の世界地図が出来ていた。

埒もない空想が、空に浮ぶ白い雲のように去来する

目をつむって頭のなかでシミュレーションする。

変な気持ちになった。この２人には、夜見る夢の中で幾度か会ったことがあるという気持ちだった。しかしすぐに現実に戻って、そうか、この２人を見ると 誰 でもこんな気持ちになるのね、と知った。 　何となく郷愁を誘う男女だった。

ハードなスケジュールで充実した日々を送っている

催眠術にかかったように、目を宙に据えて、じっと考え込む

豊穣な空想に孤独な心を満たす

確信が、密雲から太陽がおどり出たように意識を明るく照らす