堪えきれない小さな溜息。指の間で糸を引く粘膜の震えるようす

サユリを慎重に愛し始めた。彼は、おくれ毛を舌でどかしながら首筋に口を付けた。サユリの吐く息が暖まって来たのを感じると、我慢ができなくなって、彼女を抱く腕に力を込めた。

（服を脱がされる）するりと尻が剥き出しにされる。上半身もたくし上げられて、腕の付け根と首に拘束衣のようにパジャマの上着が絡む。《…略…》脚の下半分と首から上に絡みつくパジャマを、陣治は取り去ろうともしない。惨めなトルソーだ。

「なんだか、あんたの下半身、不倫の匂いがするわ」 　サユリは人差し指でティエンの尻の割れ目をなぞり、彼はその指を銃口のように感じた。

女の声は不穏な唸り声から、雌の鳴声に変わった。それにつれて、男の息遣いが伝わってきた。

体中の細胞が壊れそうなくらい情熱的なキス

（好きな人を想う）彼を無意識に疲れさすその面影

電気のように痺れるキス

結婚することによって私は、自分という玉を隅っこからまた、ちゃんと転がる軌道へと戻したいのでしょう。結婚をすれば人間としてのまっとうな人生の軌道に乗れる、婚姻、妊娠、出産と、こなしていく行事が次々とできて、その点をつなぎ合わせれば人生の見通しもつくし、忙しくて余計なことも考えなくて済む。

不安な恋情を複雑に搔き立てた。