別れた男の事をふっと考えてみる。憎い奴だと思った事もあったけれど、いまはそうでもない。憎いと思うところはみんな忘れてしまった。
林芙美子 / 新版 放浪記 ページ位置:71% 作品を確認(青空文庫)
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思い出を美化する
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......苦しい。無限に空があるくせに、人間だけがあくせくしている。 夕焼の燃えてゆく空の奇蹟 がありながら、ささやかな人間の生きかたに何の奇蹟もないと云うことはかなしい。別れた男の事をふっと考えてみる。憎い奴だと思った事もあったけれど、いまはそうでもない。憎いと思うところはみんな忘れてしまった。 いまは眼の前に、なまめかしい、白い萩が咲いているけれど、いまに冬が来れば、この花も茎もがらがらに枯れてしまう。ざまをみろだ。男と女の間柄もそんなものなのでしょ......
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今は亡き人であるだけに彼には益〻偶像化されて行く
直哉, 志賀「暗夜行路 (新潮文庫)」に収録 amazon
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天吾は息を止め、こめかみに指を当てて記憶をより深いところまでのぞき込もうとした。その今にも切れてしまいそうな意識の細い糸をたどっていった。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
思い出が、透きとおった清らかな氷のかけらのように、胸の底に沈んでいる
石坂 洋次郎 / 丘は花ざかり amazon
光代はうっすらと積もった雪に足跡をつけながら、通りの向こうのコンビニへ向かった。《…略…》「あんたの気持ちだけで、その人のこと縛りつけたらいけんやろ」 たった今、珠代に言われた言葉が、地面に残る足跡と一緒についてくる。
吉田修一「悪人」に収録 amazon
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