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「思い出っていうやつは、どんな時も哀れなもんだ。時間がたてばたつほど、美化されるから、余計、始末に負えない。たとえ、キスしながらニンニクくさいゲップをしてくるようなやつだったとしても、そいつは思い出の中では、屁もこかない王子様になるのさ」
小池真理子「愛するということ (幻冬舎文庫)」に収録 ページ位置:94% 作品を確認(amazon)
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......ーンズを売っていたかもしれない」「わたしが八十になっても、世の中にゼリービーンズなんていうものがある?」 ものの譬えだ、と彼は言い、軽蔑したようにわたしを見た。「思い出っていうやつは、どんな時も哀れなもんだ。時間がたてばたつほど、美化されるから、余計、始末に負えない。たとえ、キスしながらニンニクくさいゲップをしてくるようなやつだったとしても、そいつは思い出の中では、屁もこかない王子様になるのさ」「とにかく、やめる決心をしたの」とわたしはやんわりと彼を遮って言った。「ついさっきの話よ。いろいろなことがね、すとん、って腑に落ちたみたいになって、急に目の前が......
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