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(新生児)赤ん坊は握り締めていた手を開き、またぎこちなく指を折り畳んだ。爪は理不尽なほどに小さく、青黒く変色していた。私の粘膜を引っ搔いた血が、爪の間で固まって濁っているのだった。
小川洋子「博士の愛した数式 (新潮文庫)」に収録 ページ位置:17% 作品を確認(amazon)
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子供が生まれる・産声
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前後の文章を含んだ引用
......並んだベッドの中で、目覚めているのは彼だけだった。夜が明けるには、もう少し間があった。詰め所の明かりの中にいる白衣の人々以外、廊下にもロビーにも人影はなかった。赤ん坊は握り締めていた手を開き、またぎこちなく指を折り畳んだ。爪は理不尽なほどに小さく、青黒く変色していた。私の粘膜を引っ搔いた血が、爪の間で固まって濁っているのだった。「すみません。ちょっとお願いが……」 ふらつく足で、私は詰め所へ急いだ。「子供の爪を、切ってやってほしいんです。元気に手を動かすものですから、自分の顔を傷つける......
単語の意味
赤ん坊(あかんぼう)
赤ん坊・・・赤ん坊】生まれて間もない子供。また、おなかの中の子供。身体が赤みがかっているからいう。赤子(あかご)。赤ちゃん。
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母親になった喜びは、何事をも征服した勝利感に似ている
有吉 佐和子 / 華岡青洲の妻 amazon
(赤んぼうの生まれた家。家は)なまぬくいお櫃の蓋を取ったときのような、 饐えた匂いがする。赤子のおむつのせいか乳の匂いなのか。
向田邦子 / 男眉「思い出トランプ(新潮文庫)」に収録 amazon
(陣痛)陣痛の予感がある。それは宿命的な列車のように予定の時刻を違えることなく駅に近づいてくる。彼女はレールの微かな震えを聴き取る。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
犬は一度にたくさんの子犬を生むんだ。しかも安産でね。《…略…》えんどうの実がさやから弾けるみたいに、気持ちよくぷちぷち、子犬が生まれてくるのかしら
小川 洋子「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
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花の散るがごとく、葉の落つるがごとく、わたくしには親しかったかの人々は一人一人相ついで逝ってしまった。
永井 荷風 / ぼく東綺譚 amazon
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