部落にかけられた火は一角だけではなく、周りの藁屋根に燃えうつり、赤黒い炎が靄のなかで、まるで生きもののように動いていました。それなのにひどく静かでした。まるで部落とそこに住む百姓たちが、黙々とこの苦しみを受けいれているかのようでした。
遠藤周作「沈黙(新潮文庫)」に収録 ページ位置:34% 作品を確認(amazon)
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火事
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前後の文章を含んだ引用
......く自分と同じ運命に引きこもうとする。その気持は追放された天使が神の信徒を罪に誘おうとする心理にきっと似ているにちがいありません。 夕靄は既にあたりを包みはじめ、部落にかけられた火は一角だけではなく、周りの藁屋根に燃えうつり、赤黒い炎が靄のなかで、まるで生きもののように動いていました。それなのにひどく静かでした。まるで部落とそこに住む百姓たちが、黙々とこの苦しみを受けいれているかのようでした。彼等はこういう苦しみに長い長い間、馴らされてきたため、もう泣いたり、わめいたりすることさえしなかったのかもしれませぬ。 部落を見棄てて歩きだすことは、治りかかっ......
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火事の表現・描写・類語(事件・事故のカテゴリ)の一覧 ランダム5
煙は勢いよくなったかと思うと少し収まりというのをくりかえしていた。人々は大声で何かを叫んだり命令したりしていた。ぱたぱたと大きな音をたてて新聞社のヘリコプターがやってきて写真を撮って帰っていった。
村上春樹 / ノルウェイの森 amazon
小屋は今は太い火束となって、盛んに燃えていた。火の中から、しゅるしゅると水の流れるような音が、聞えて来た。
昇平, 大岡「野火(のび) (新潮文庫)」に収録 amazon
炎が、生きているように黄金色に光りながら家をのむ
中上 健次 / 枯木灘 amazon
窓から悪戯をしているように赤い舌が覗いたり隠れたりする
辻井 喬 / 暗夜遍歴 amazon
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「事件・事故」カテゴリからランダム5
闇の底を焦がして燃え盛る火の帯
真継 伸彦 / 鮫 amazon
見込み違いの捜査で身に覚えのない罪を着せられ
雫井 脩介「火の粉 (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
「火・煙・灰」カテゴリからランダム5
漫画の吹き出しのように天井に浮かんだ白い煙
村上 春樹 / 1973年のピンボール amazon
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