肉体的には、キスを交わし、せいぜいその周辺を行きつ戻りつした程度でしかない

胸に触れる。和服が、もどかしいというように私の手が荒く動く

女の声は不穏な唸り声から、雌の鳴声に変わった。それにつれて、男の息遣いが伝わってきた。

男の唇と指が同時に動き出し、女は熱い体温にすっぽり包まれる。女は大きな流れに身をまかそうと決めた。

脈を打って震えている僕のペニスを握りしめて、唇が僕の腹に触れる程深く含んだ。舌で押さえつけて舐め回し、噛み、ザラザラしたちょうど猫のように尖った舌で尿道を撫でる。

不意に柔かく永く一つの唇が彼女の唇に押し当てられた。全神経が目醒めた。佃の存在が灼きつくように甦った。

敏感な先端部分を刺激すると、快感が肛門のあたりから頭部までを貫く一本の筋となった。

巡る血液と一緒に鋭い快感が全身を駆け、顳顬（こめかみ）に溜まっていく。一度からだに起こりこびりついた快感はどこにも出ていかない。火花に触れて火傷する皮膚と同じに顳顬の裏側の頭蓋に貼りつく薄い肉の層が音をたててただれる。そのただれに気付き快感をそこに集中すると、体中が全て巨大なペニスになったような錯覚に陥いる。女の中に入り込み、全身で暴れて女を歓ばせる小人になったみたいだ。

亜美ちゃんが大学生になり、彼が社会人になり、環境が変わったのが、別れる契機になった

どちらの意思というのでもなく後背位で重なり合うとき、十和子は自分が部屋の向こう側からこの交接の一部始終を眺めているような気分になる。我を忘れた者の表情を浮かべて喘ぐ自分を計算し観察している。映画のなかの数限りない情交シーンが入り乱れて浮かぶ。それらの架空のシーンが現実の行為にのりうつり、支配しようとする。