毛筋ほどの疑惑も持たない

あなたは殺人犯に何の制裁も与えず、社会に解き放ったんだ

霧が去っていくように、疑念が取り払われる

曇った硝子の表面がみるみる澄明になっていくみたいに疑問が解ける

霧がはれて山の姿がハッキリ見え出すように疑う余地がない

東京銀座のレストラン・モナミのテーブルに倚（よ）りかかって、巴里（パリ）のモンパルナスのキャフェをまざまざと想い浮べることは、店の設備の上からも、客種の違いからも、随分無理な心理の働かせ方なのだが、かの女のロマン性にかかるとそれが易々と出来た。 　ふだんから、かの女は地球上の土地を、自分の気持の親疎によって、実際の位置と違った地理に置き換えていた。つまり感情的にかの女独得の世界地図が出来ていた。

（叶わない夢）夢にみるほど恋いこがれてみたところで仕方がない。猫が汽車に乗りたいと思うようなものだ。

何もかも忘れてふける

判断力は、ヒューズが切れるようにぷつんと停止してしまいます

夢みたいな思い込みかもしれない。