残暑は去り、空気は乾いて透き通り、中庭に射す母屋の影の形も、木立の葉の色合も真夏とは違っていた。
小川洋子「博士の愛した数式 (新潮文庫)」に収録 ページ位置:91% 作品を確認(amazon)
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初秋
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前後の文章を含んだ引用
......クロスを広げることだよ。そうは思わないかい? 僕はね、アイロン掛けが上手なんだ」 どれくらい長い間、忘れ去られていたのだろう。テーブルクロスは皺だらけだった。 残暑は去り、空気は乾いて透き通り、中庭に射す母屋の影の形も、木立の葉の色合も真夏とは違っていた。光はまだそこかしこにあふれているのに、一番星と月がひっそりと浮かび、雲が刻々と姿を変えていた。木々の根元には暗闇が忍び込もうとしているが、その気配はまだ弱々しく......
単語の意味
母屋・母家(おもや・もや)
真夏(まなつ)
残暑(ざんしょ)
母屋・母家・・・敷地の中のメインとなる建物。その家の主人がすむ建物。物置や離れの建物でないところ。
真夏・・・夏の一番暑いころ。夏の盛り。
残暑・・・立秋が過ぎても残る暑さ。
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けだるい日曜日の午後、少し開いた窓からひんやりとした風がそよそよ入ってきていた。世界中が少しだけ黄色になって、空気が透明になっている。光線が目に見えるほどはっきりとしている。いつのまにか秋の気配がせまってきていた。
よしもとばなな / まぼろしハワイ「まぼろしハワイ」に収録 amazon
庭の朝顔の葉が弱まった陽ざしにかさかさと鳴って、秋の音を伝えだす
連城 三紀彦 / 恋文 amazon
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最初はなにか夕焼の反射をでも受けているのじゃないかなど疑いました。そんな赤さなのです。
梶井基次郎 / 橡の花
エゾマツの葉が緑のまま落ちるとき、音階にならない音がする。
宮下 奈都「羊と鋼の森 (文春文庫)」に収録 amazon
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