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(タマリスクという花の名が思い出せない)あれはなんという名だったか。砂嵐に 烟って一面に咲き乱れるという紅紫色の花。どうしても思い出せない。タマ……タマス……タクマ……タリスマ……タクラマ……。口のなかでどう唱えても最後にはタクラマカンという語になってしまう。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 ページ位置:41% 作品を確認(amazon)
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忘れる・思い出せない・曖昧な記憶
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前後の文章を含んだ引用
......ッドに横たわって目を閉じると、額の裏側に様々な水島の姿が現れ、声が聞こえる。水島の指、水島の目、髪、ナプキンで口を拭く仕草、笑い声、におい、味、息の湿り――。 あれはなんという名だったか。砂嵐に烟って一面に咲き乱れるという紅紫色の花。どうしても思い出せない。タマ……タマス……タクマ……タリスマ……タクラマ……。口のなかでどう唱えても最後にはタクラマカンという語になってしまう。名を忘れたその花、閉じたまぶたの裏側の血の色に似た花が、冷たい炎のように燃え盛って、地平線さえ定まらない砂漠のひろがりを茫々と覆い尽くしている。十和子の指先から......
単語の意味
煙る・烟る(けむる・けぶる)
咲き乱れる(さきみだれる)
紅紫(こうし)
紅紫(べにむらさき)
煙る・烟る・・・霧やかすみなどで辺りがぼやける。白煙や色のある煙がもくもくと出て、辺り一面に広がる様子。
咲き乱れる・・・たくさんの花が、一面に美しく咲いている。花が盛んに咲いている。
紅紫・・・紅(くれない)と紫(むらさき)。転じて、さまざまな美しい色のたとえ。
紅紫・・・紅がかった明るい紫色。
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背は、高かったと思う。それとも背筋がすっと伸びていて、首が長かったからそう見えたのかもしれない。
浅田次郎 / 伽羅「鉄道員(ぽっぽや) (集英社文庫)」に収録 amazon
幻灯のなかの光景のようにぼんやりした記憶
辻井 喬 / 暗夜遍歴 amazon
記憶の彼方に消えて行って仕舞った
岡本かの子 / 母子叙情
僕にはその女を思いだすことができなかった。まるでキリコの絵の中の情景のように、女の影だけが路上を横切って長くのびていた。
村上春樹 / ねじまき鳥と火曜日の女たち「パン屋再襲撃 (文春文庫)」に収録 amazon
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津波のような思い出にあえぎ苦しむ
本庄 陸男 / 石狩川〈上〉 amazon
(大した思い出ではない)長原のことは意識の中にあった。けれどもそれは、記憶の沼の上にちゃぷちゃぷと湧く泡のようなものだ。眉を寄せて集中すれば泡は大きくなる。けれども思いをときはなってみれば、いつのまにか底の方へ沈んでしまう。その程度のものだ。
林 真理子 / 最終便に間に合えば amazon
思い出が、透きとおった清らかな氷のかけらのように、胸の底に沈んでいる
石坂 洋次郎 / 丘は花ざかり amazon
砂が両手からこぼれ落ちていくかのように、記憶が少しずつ失われる
小池 真理子 / やさしい夜の殺意 amazon
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