サイレンが町じゅうを震わさんばかりに響く

丸い赤色警光灯を覆面パトカーのルーフに装着し、サイレンのスイッチを入れた。途端に、耳を 聾する音響が響き渡った。一拍遅れて、前方を走行中の乗用車やトラックがハザードランプを点滅させて、次々と左側の路肩へ寄せてゆく。その様子を見計らうようにして、運転席の 柳 栄 次郎 巡査部長が前後左右を確認してからアクセルを踏み込んだ。

パトカーのサイレンの音が、四方八方から湧き上がって、波のように押し寄せる

サイレン音がそのまま和音を作っているようにも聞こえた。三台のパトカーが縦に並んで、次々に走っていった。

音は鳴っていないが、回転灯が光っている。

ワゴン車は、どれも車体の沈むほどの商品を満載して、

夜中のすいた道路を代々木から新宿へ、そして四谷、赤坂、青山、広尾、六本木、代官山、渋谷へと車を進めた。

信号で停車する。ウィンカーの焦れるようなせっかちな音が、久遠たちを急かしているようだった。

新幹線が速度を落としはじめ、走行音も変わる。つかんでいた線路をゆっくりと手放すかのように、響きが軽くなる。

競走のような張りを見せて舟々は帆（ほ）を上げている。