（誰もが辛い目に遭っている人々が描かれた聖堂のレリーフ）皆、目と口は単なる穴だった。 鑿 で空けられた素朴な洞だった。そのせいか誰もが、自分の身に降りかかる災難の悲惨さに見合うだけの苦痛を、訴えかけているようには見えなかった。
小川 洋子 / 乳歯「口笛の上手な白雪姫」に収録 ページ位置：70% 作品を確認（amazon）
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前後の文章を含んだ引用
......がらせていた。 片腕が肥大して横笛になる。唇にカエルが吸いつく。伸びすぎた爪が湾曲して掌を貫通する。お臍から樹木が生える。その樹木にたわわに果実が実る。……。 皆、目と口は単なる穴だった。鑿で空けられた素朴な洞だった。そのせいか誰もが、自分の身に降りかかる災難の悲惨さに見合うだけの苦痛を、訴えかけているようには見えなかった。苦痛を与える側もむしろ、できればこんなことに手を貸したくはないのだが、という雰囲気を漂わせていた。絶望して泣き叫ぶでもなく、残忍さをむき出しにするでもなく、お互......
単語の意味
素朴（そぼく）
悲惨（ひさん）
虚ける・空ける（うつける）
素朴・・・あまり手が加えられていない、自然に近い状態のこと。ありのままで飾り気がない状態のこと。素直で単純。
悲惨・・・気持ちが耐えられないほど痛ましいこと。また、そのさま。
虚ける・空ける・・・ぼんやりする。何をする意欲もなくなる。気が抜けたようになる。
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（聖堂の）雨風で風化した質感や溝の堆積物が、味わい深い雰囲気を醸し出していた。
小川 洋子 / 乳歯「口笛の上手な白雪姫」に収録 amazon
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「道具・家具」カテゴリからランダム５
病室の中央には、十分に乾燥したシーツでたっぷりと包まれたベッドがあった。それは大きな白い動物がうずくまったように重そうだった。
小川洋子 / 完璧な病室「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
ベッドの足元にはワーク・ブーツが行き倒れた二匹の子犬のような格好でごろんと横たわっていた
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
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