イカの味、おいしさを伝える表現・描写

カラカラに乾いたイカ

イカは透き通っているばかりでなく、その体に燐光のような光を帯びて、レースのハンカチで口元を押さえている貴婦人のようにしなやかに泳いでいる

イカは浜に揚げられたときは透明で、じきに赤茶けて次に白くなる。新鮮なのはこの辺りまでだ。

象牙のような滑らかさがあって、生もちよりよっぽど歯切れがいい

「イカそうめん」という言葉を耳にするが、本を正せばイカ刺しを細かく切ったものに過ぎない

生簀から上がったばかりのヤリイカの刺身は、イカ刺しの既成概念を一変させるくらいうまかった

喉元をくすぐりながら落ちていく

肉質は半透明で、刺身を噛むと誠に上品な甘みがある。歯ごたえはコリコリと実に快い。

イカの煮物は肉身がポクポクと締まり、煮汁に入れた肝のおかげで美麗な小豆色に染まる

スルメイカは味が淡白で、慎ましやかで飽きがこない

イカの泳ぎ方は、マンガ映画ように創作したんじゃないかと思うくらい変な格好

どこからともなく海鳥の群れが、白く長い翼に羽音を立てて風を切りながら、船の上に現われて来る。猫（ねこ）のような声で小さく呼びかわすこの海の砂漠（さばく）の漂浪者は、さっと落として来て波に腹をなでさすかと思うと、翼を返して高く舞い上がり、ややしばらく風に逆らってじっとこたえてから、思い直したように打ち連れて、小気味よく風に流されて行く。