暗闇の中、電球がそのまわりだけほの暗い光を落とす

けばけばしい電灯の光だけが、むちうつようにがらんとした部屋（へや）の薄ぎたなさを煌々（こうこう）と照らしている

天井近く浮んだ微塵物にシャンデリアの光が射して桃色や紫色の横雲に見えた。よく見るとその雲は踊りのテンポと同じ調子に慄（ふる）え、そして全体として踊りの環と同じ方向にゆる／＼移っていた。

蛍光灯の明かりは弱々しく薄暗い。

シャンデリヤの明りが、そのテーブルの上に散らかっている書類――タイプライタアの紫インクがぼやけた乱暴な厚い綴込（とじこみ）、隅を止めたピンがキラキラ光る何かの覚え書――の雑然とした堆積と、それらを挾んで相対し熱心に読み合せをしている二人の男とをくっきり照して、鼠色の絨毯（じゅうたん）の上へ落ちている。

大きな窓から陽がいっぱい入って、テーブルのうえもまぶしい。

壁は一面書棚に囲まれている

ランプの仄明かり

キッチンはさっぱりと片付いていた。調理道具は決まった場所に全部収まっていたし、ステンレスの調理台は乾ききっていたし、食器洗浄器の中は空だった。システムキッチンのショールームのように、よそよそしく味気なかった。

細いバンドのように閂（かんぬき）のついた木扉が両方に開いて