私は唾を飲み込み、喉から小さく空気を押し出して、声を出した。《…略…》水たまりに人差し指で触れたように、波紋になって自分の発した言葉が世界に広がっていく光景に、見とれていた。
村田 沙耶香「しろいろの街の、その骨の体温の」に収録 ページ位置:88% 作品を確認(amazon)
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前後の文章を含んだ引用
......はない。私は、信子ちゃんみたいに世界に触ってみようと思った。そう思うと、緊張で手のひらが汗ばんだ。 チャイムが鳴って、若葉ちゃんはほっとしたように立ち上がった。私は唾を飲み込み、喉から小さく空気を押し出して、声を出した。「小学校の」「……?」 声が掠れ、言葉が途切れた。自分の声が、録音した声を聴いているようで恥ずかしかった。 若葉ちゃんは一瞬不思議そうに足を止めたが、また歩き出......<中略>......た言葉は、保健室の空気を震わせて、若葉ちゃんに触れた。そうして誰かに触れることは、初めての経験だった。「……」 若葉ちゃんは不愉快そうに眉を寄せた。私は続けた。水たまりに人差し指で触れたように、波紋になって自分の発した言葉が世界に広がっていく光景に、見とれていた。「私……若葉ちゃんの緑色のガラスの指輪、好き。若葉ちゃんの部屋の中で、あれが一番好き」 若葉ちゃんはこちらと目を合わせないまま、低い声で言った。「きもぉーい……......
単語の意味
見とれる(みとれる)
光景(こうけい)
人差し指(ひとさしゆび)
見とれる・・・あるものに心引かれて、ぼーっと見る。素敵なものに我を忘れて見入る。「見惚れる・見蕩れる」とも書く。
光景・・・1.目に前に広がる景色。そこに見える景色や物事のありさま。景色。様子。
2.日の光。
2.日の光。
人差し指・・・親指のとなりの指。親指と中指の間の指。人を指差すときに使う指。人に指示するや、何かを指し示すときに使う指。英語で index finger。食指(しょくし)。塩舐め指・塩嘗め指(しおなめゆび)。第二指(だいにし、親指から二番目のため)。
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話す・しゃべるの表現・描写・類語(言葉を交わすのカテゴリ)の一覧 ランダム5
かいわ【会話】二人あるいは小人数で、向かい合って話し合うこと。また、その話。成立することは困難。どちらかが満足を得ると、どちらかは忍耐を強いられることが多い。
伊坂 幸太郎「陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)」に収録 amazon
口外に投げる
芥川龍之介 / 偸盗
おできから膿がほとばしり出るように、言わずにいられない
曽野 綾子 / 夫婦の情景 amazon
言葉が羽搏(ばた)く鳥のように、いたずらにあちこちと見苦しく飛び廻る
伊藤 整 / 青春 (1960年) amazon
会話は嚙みあいかたの良い歯車のようにじっくり進展してゆく。
大江 健三郎 / われらの時代 amazon
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「言葉を交わす」カテゴリからランダム5
コズミくんがシャイな感じでまたも告白を始めた。彼の告白はいつも唐突で深刻だ。
吉本 ばなな「アムリタ(上) (新潮文庫)」に収録 amazon
「寝てた?」とすみれは探るように言った。
村上春樹「スプートニクの恋人 (講談社文庫)」に収録 amazon
まだ生れ出ぬ言葉をふくんで子供の口のようにもぐもぐ動いていた。
野間 宏 / 哀れな歓楽「暗い絵・顔の中の赤い月 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
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