（覗き込む）女はその男の目のなかの黒目の少し濡れて輪っかになった部分を本当にのぞき込むような気持ちで見つめたから、まるで目薬を無理矢理に注がれたみたいに男はまたたくまに液体のような嫌悪感でいっぱいになった。

お互いの視線が凍ったように止まる

警備員はぼくの目をまっすぐに見ながら話した。ぼくは挑戦的な印象を与えないように注意しながら、その視線をずっと正面から受けとめていた。

ソファに身を預け、しばらく無言で互いの胸の裡を探っていた

（にらみ合う）虚空で空中戦を繰り広げる

じっと悲しく見つめ考えていたスタンドの灯影

すりガラス越しのように、ほのかに見える

蜃気楼みたいにボンヤリ霞んで見える

頭のてっぺんから爪先まで舐めるように視線を這わせる

以前自分はよく野原などでこんな気持を経験したことがある。それはごくほのかな気持ではあったが、風に吹かれている草などを見つめているうちに、いつか自分の裡（うち）にもちょうどその草の葉のように揺れているもののあるのを感じる。それは定かなものではなかった。かすかな気配ではあったが、しかし不思議にも秋風に吹かれてさわさわ揺れている草自身の感覚というようなものを感じるのであった。酔わされたような気持で、そのあとはいつも心が清（すが）すがしいものに変わっていた。