僕を不安にしたのは彼の自殺したことよりも僕の東京へ帰る度に必ず火の燃えるのを見たことだった。僕は或 は汽車の中から山を焼いている火を見たり、或は又自動車の中から(その時は妻子とも一しょだった)常磐橋界隈 の火事を見たりしていた。それは彼の家の焼けない前にもおのずから僕に火事のある予感を与えない訣には行かなかった。 「今年は家が火事になるかも知れないぜ」
※備考※ 彼 → 自宅を放火した疑いをかけられて自殺した姉の夫
芥川竜之介 / 歯車 ページ位置:22% 作品を確認(青空文庫)
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胸騒ぎ・嫌な予感
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前後の文章を含んだ引用
......ていた。それもまた実際仕かたはなかった。彼は家の焼ける前に家の価格に二倍する火災保険に加入していた。しかも偽証罪を犯した為に執行猶予中の体になっていた。けれども僕を不安にしたのは彼の自殺したことよりも僕の東京へ帰る度に必ず火の燃えるのを見たことだった。僕は或 は汽車の中から山を焼いている火を見たり、或は又自動車の中から(その時は妻子とも一しょだった)常磐橋界隈 の火事を見たりしていた。それは彼の家の焼けない前にもおのずから僕に火事のある予感を与えない訣には行かなかった。 「今年は家が火事になるかも知れないぜ」 「そんな縁起の悪いことを。……それでも火事になったら大変ですね。保険は碌 についていないし、……」 僕等はそんなことを話し合ったりした。しかし僕の家は焼けずに、―......
単語の意味
燃える(もえる)
燃える・・・1.物に火がつく。燃焼する。
2.気持ちが高ぶる。熱中する。
2.気持ちが高ぶる。熱中する。
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