景色を掻き消すような勢いで、目の前を列車は走り抜ける。轟々と流れていく。

ペンキを何重にも塗り固めたキハ１２の運転台

汽車はだんだんゆるやかになって、まもなくプラットホームの一列（れつ）の電燈（でんとう）が、うつくしく規則（きそく）正しくあらわれ、それがだんだん大きくなってひろがって、二人はちょうど白鳥停車場（ていしゃじょう）の、大きな時計（とけい）の前に来てとまりました。

電車は次のホームにまるで船のようにゆっくりと、静かにたどりついた。

轟々（ごうごう）と地ひびきをたててお召列車が通る。

船は海岸近くの波に激しく動揺しながら、艫を海岸のほうに向けかえてだんだんと汀（みぎわ）に近寄って行く。

（電車は、）不良の酒のように絶えざる車体の微動につれて人を酔わす。

ワイパーがフロントガラスをこする

白い軌跡を描き、オレンジ色の炎の固まりとなったロケットは、あっという間に低く垂れ込めた雲を突き破り、視界から消え去っていった。 　そしていま──。 　遥かに、エンジンの轟音だけが、かすかにきこえる。 　それはまるで、モノトーンロケットエンジン名が佃たちに残した別れの言葉のようだった。 　一陣の強風がロケットの軌跡を 薙ぎ、かき消した。

上野から信越線に乗ると、朝の窓の風景は、いつの間にか茫々とした秋の景色だった。あたりはすっかり秋になっている。窓を区切ってゆく、玉蜀黍（とうもろこし）の葉は、骨のようにすがれてしまっていた。