上野から信越線に乗ると、朝の窓の風景は、いつの間にか茫々とした秋の景色だった。あたりはすっかり秋になっている。窓を区切ってゆく、玉蜀黍 の葉は、骨のようにすがれてしまっていた。
林芙美子 / 新版 放浪記 ページ位置:52% 作品を確認(青空文庫)
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車窓からの風景
秋
電車・汽車
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前後の文章を含んだ引用
......いのだ! 富士山――暴風雨 停車場の待合所の白い紙に、いま富士山は大あれだと書いてある。フン! あんなものなんか荒れたってかまいはしない。風呂敷包み一つの私が、上野から信越線に乗ると、朝の窓の風景は、いつの間にか茫々とした秋の景色だった。あたりはすっかり秋になっている。窓を区切ってゆく、玉蜀黍 の葉は、骨のようにすがれてしまっていた。人生はすべて秋風万里、信じられないものばかりが濁流のように氾濫 している。爪の垢 ほどにも価しない私が、いま汽車に乗って、当もなくうらぶれた旅をしている。私は妙に旅......
単語の意味
景色(けしき)
風景(ふうけい)
茫(ぼう)
景色・・・風景。眺め。とくに、自然の眺め。
風景・・・自然の景色。目の前に広がる眺め。その場の情景。
茫・・・1.果てしなく広いさま。
2.ぼんやりとしてはっきりしないさま。
2.ぼんやりとしてはっきりしないさま。
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車窓を通り過ぎていく見慣れた街のたたずまいが、映画のなかの風景のように細部まで生きいきと際立って見える。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
車が、走り出す。街がすべり出す。
吉本 ばなな / 満月 キッチン2「キッチン (角川文庫)」に収録 amazon
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セーターを着ると新しい季節のにおいがした
村上春樹 / ノルウェイの森 amazon
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繰り返し電車は駅に停車し、また夜の中に滑り出す。
吉本 ばなな / 新婚さん「とかげ (新潮文庫)」に収録 amazon
新幹線の速度が落ち始め、音が変わった。
伊坂 幸太郎 / ラッシュライフ amazon
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錨を上げる震動が、錨室と背中合せになっている漁夫を煎豆 のようにハネ飛ばした。
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タクシーが、吸い寄せられたように、彼の眼前に滑って来た。
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稲の穂が重そうな首を止まず動かしてはさらさらと寂しく笑う
長塚 節 / 土 amazon
秋の夜の空気は清冽な水のように胸にすがすがしい
森田 たま / もめん随筆 amazon
庭の朝顔の葉が弱まった日差しにカサカサと鳴って、秋の音を伝えだす
連城三紀彦 / 十三年目の子守唄「恋文」に収録 amazon
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山から見下ろすとまるで豊かな海のようにも見えた一面の桑畑
村上 春樹 / 1973年のピンボール amazon
あやまって海に落ち込んだ悪魔が、肉付きのいい右の肩だけを波の上に現わしている
有島武郎 / 生まれいずる悩み
(空き地)歩いたところに小さな三角形の緑地
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
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