チチ、チチ、と沢千禽 の声に、春はまだ、峠 はまだ、寒かった。木の芽頃の疎林 にすいて見える山々の襞 には、あざやかに雪の斑 が白い。
吉川英治 / 野槌の百 ページ位置:0% 作品を確認(青空文庫)
この表現が分類されたカテゴリ
晩冬・春先
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
一 チチ、チチ、と沢千禽 の声に、春はまだ、峠 はまだ、寒かった。木の芽頃の疎林 にすいて見える山々の襞 には、あざやかに雪の斑 が白い。 「あなた。――あなた」 お稲は、力なく、前に行く人をよんだ。 かの女の十間ほど前を、三五兵衛は黙々と、あるいて行くのだった。 振り向いて、棘 のある眼が、 「なんだ?」 と、邪慳 にいった。 生まれてまだ六月か七月ぐらいな嬰児 を背に、つかれた足を、弱々と、引きずって来たお稲には、その十間の幅さえ、追いつくのに努力だった。......
単語の意味
疎林(そりん)
斑(まだら・むら・ぶち)
疎林・・・木と木の間から向こうの風景が見えるほど、立ち木がまばらな林。
斑・・・1.下地の色とは違う色が、不規則に混じっている模様。いろいろな色や濃淡の入りまじっている模様。また。そのさま。
2.1が転じて、ある現象が現れたり、現れなかったりすることのたとえ。はっきりした部分とそうでない部分があるのたとえ。
2.1が転じて、ある現象が現れたり、現れなかったりすることのたとえ。はっきりした部分とそうでない部分があるのたとえ。
ここに意味を表示
晩冬・春先の表現・描写・類語(春のカテゴリ)の一覧 ランダム5
春もやや準備が出来たといった工合 に、和やかなものが、晴れた空にも、建物を包む丘の茂みにも含みかけていた。
岡本かの子 / 母子叙情
しのびやかに軽くくすぐるように、一日ずつ近づいてくる春
森田 たま / もめん随筆 amazon
このカテゴリを全部見る
「春」カテゴリからランダム5
冬と春との入れかわる三月だ。
宮本百合子 / 伸子
淡い新緑が粉を噴いているように見える
林 芙美子 / 晩菊・水仙・白鷺 amazon
「冬」カテゴリからランダム5
霧をはらんだ冬の夜ふけの冷たい空気が硬い粉のように瞼や頬に痛かった
大江健三郎 / 芽むしり仔撃ち amazon
同じカテゴリの表現一覧
春 の表現の一覧
冬 の表現の一覧
風景表現 大カテゴリ