はてしなく空想することができる。他人の想像力でつくった小説よりも、自分のこの空想に、ずっと興味があった。孤独な、夢の浮遊する楽しさである。

千里眼のように思い浮かんで来る

深い霧のなかを影法師のように過ぎてゆく想念がだんだん分明になって来る。 　彼の視野のなかで消散したり凝聚（ぎょうしゅう）したりしていた風景は、ある瞬間それが実に親しい風景だったかのように、またある瞬間は全く未知の風景のように見えはじめる。そしてある瞬間が過ぎた。――喬にはもう、どこまでが彼の想念であり、どこからが深夜の町であるのか、わからなかった。暗のなかの夾竹桃はそのまま彼の憂鬱であった。物陰の電燈に写し出されている土塀、暗と一つになっているその陰影。観念もまたそこで立体的な形をとっていた。 　喬（たかし）は彼の心の風景をそこに指呼することができる、と思った。

変な妄想が、今呑んでいる煙草の煙のように、淡く彼の心を掠めて過ぎた。

頭の中にとりとめもない考えが浮かぶ。コーヒーの香りが私の夢をふくらませてくれた。

地球の運命に思いをはせるほどに、大きな視野と豊かな想像力を持つ

寝不足みたいに頭が働かない

意識がだんだんあるべき場所に戻り、身体の感覚が通常に復してきた。

露ほどの疑問も抱かない

首を振ってその考えを放棄する