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一日一日が淡々と流れ過ぎて行くことに悔いも 焦りも感じなかったが、それでも夜が始まると、一種名状し難い 空しさを覚えてしまうのである。このまま終わって行くだろう自分の 生涯 に対する 漠然たる焦燥感だけではなかった。時の流れとは無関係に、自分というものが沈滞してしかも確実に老いて行っていることに対するやりきれなさで、それが夜の 灯 に包まれていっそう切なく 溢れ出て来るのだった。
宮本 輝「道頓堀川(新潮文庫)」に収録 ページ位置:79% 作品を確認(amazon)
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冴えない、ぱっとしない人生
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前後の文章を含んだ引用
......う悩み以外、これといった不満はなかった。武内は、ユキと違って、店を増やしてもっと儲けてやろうとか、店内の装飾を一新して新しい客を得ようという望みはなかったから、一日一日が淡々と流れ過ぎて行くことに悔いも焦りも感じなかったが、それでも夜が始まると、一種名状し難い空しさを覚えてしまうのである。このまま終わって行くだろう自分の生涯に対する漠然たる焦燥感だけではなかった。時の流れとは無関係に、自分というものが沈滞してしかも確実に老いて行っていることに対するやりきれなさで、それが夜の灯に包まれていっそう切なく溢れ出て来るのだった。 新しい伴侶を得たいのは、ひょっとしたら吉岡よりも自分のほうかも知れないと武内は思い、そうなったあとのわずらわしさをひとりで空想して、さらにやりきれない気分にひ......
単語の意味
名状(めいじょう)
名状し難い(めいじょうしがたい)
焦燥(しょうそう)
淡淡・淡々(たんたん)
遣り切れない(やりきれない)
淡(たん)
名状・・・言葉で表現すること。物事うまく言葉で説明すること。
名状し難い・・・言葉でうまく表現できない。言い表すのが難しい。
焦燥・・・苛立ち。焦り。イライラすること。
淡淡・淡々・・・1.落ち着いて感情の起伏があまりなく見える。言動に無駄がなく、あっさりしている。「淡々と仕事をこなす」
2.色や味などが淡白。しつこくなく、あっさりしている。
同じ漢字を重ねることで、語調を整えて意味を強めた表現。
2.色や味などが淡白。しつこくなく、あっさりしている。
同じ漢字を重ねることで、語調を整えて意味を強めた表現。
遣り切れない・・・耐えられない。我慢できない。やり切ることができない。
淡・・・淡いこと。味や色が濃くないこと。あっさり。
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冴えない、ぱっとしない人生の表現・描写・類語(人生のカテゴリ)の一覧 ランダム5
七十年の生活をふり顧ってみると溜桶の蛆虫が桶の壁を攀じ登っては落ち、攀じ登っては落ちして依然として汚物の中から脱け出られなかった姿の厭しさが考えられる。
中山 義秀 / 厚物咲 (1955年) amazon
振り返ってみると、それは人生ですらないような気がする。少し起伏はあった。ごそごそと登ったり降りたりはした。でもそれだけだった。殆んど何もしていない。何も生み出していない。誰かを愛したことはあったし、誰かに愛されたこともあった。でも何も残っていない。奇妙に平坦で、風景が平板だ。まるでビデオ・ゲームの中を歩いているみたいな気がする。パックマンみたいだ。ぱくぱくぱくと迷路の中の点線を食べていく。無目的に。そしていつか確実に死ぬ。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
心配などあるわけがない。自分のこんな人生に、守るものもない。
中村文則 / 教団X amazon
いつまでつづければいいのだろう、うさん臭い、ありきたりな、もっと僕にはとくべつな、気が、男はありったけの呪詛の言葉を並べてみたいのだったけど、こういうときのこの気持ちをさらに高ぶらせる種類の言葉の用意がどこにもないので、追いかけてもからからと音がするばっかりで、まるで役に立たない字づらの残りかすにまで人生を笑われてるようだった。
川上 未映子 / あなたたちの恋愛は瀕死「乳と卵(らん) (文春文庫)」に収録 amazon
繭(まゆ)の中で眠っている蛹(さなぎ)の生活のような半生
石坂 洋次郎 / 丘は花ざかり amazon
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(二十歳の誕生日を迎えた翌年)十代に完全に終止符を打った。
村上 春樹 / ノルウェイの森 下 amazon
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