好きな人と目が合うと、時間が止まり周りが透明になった

かごの中の鳥が空に恋するように

胸はしめつけられるように苦しくなる。でもそれは心地の良い苦しさだ。いくらでも耐えられる苦しさだ。

パパを取り巻いている恋の熱が心地よく感じられた

出あうかぎりの男と女とが何がなしにひき着けられて、離れる事ができなくなる、そんな磁力のような力を持っている

乙彦とは終わってしまった。 　終わった。長い時間をかけて。 　モザイクみたいに乱れてごちゃごちゃになった彼女の心は、死というひとつの言葉に向かって集約されつつあった。すごい勢いで、無音で。

清浄無垢の処女

（好きになった人を話題にしない）蒔野は、ほどなく洋子のことを何も言わなくなった。それは、関心を失ったからではなく、彼女への思いの中に、何か気軽には人前に曝せない感情が籠もるようになったかららしかった。

フレンチキス

「シンイチ好き」 　サユリがそう 囁くのと同時にシンイチは鋭い叫び声を上げた。それが、今までの沈黙と反比例するほどに大胆であったため、もう死人のふりができなくなった。彼女は天を振り仰ぐシンイチの 顎 を見上げながら、雨乞いの儀式を思い浮かべた。 　荘厳だわ。サユリの目は感動のために 潤んだ。これはファックではないわ。これこそメイクラブというものなんだわ。彼女はシンイチの体をもう一度撫でた。ミサ曲が流れてもおかしくはないおごそかな雰囲気がベッドのまわりに漂っていた。