(好きになった人を話題にしない)蒔野は、ほどなく洋子のことを何も言わなくなった。それは、関心を失ったからではなく、彼女への思いの中に、何か気軽には人前に曝せない感情が籠もるようになったかららしかった。
平野 啓一郎「マチネの終わりに (文春文庫)」に収録 ページ位置:19% 作品を確認(amazon)
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前後の文章を含んだ引用
......恐らくは洋子の方が、そう思っているだろう。直接そう言えば、きっとあのこちらの心を何もかも見透して、優しく理解するような目で、首を横に振ってみせるに違いないが。 蒔野は、ほどなく洋子のことを何も言わなくなった。それは、関心を失ったからではなく、彼女への思いの中に、何か気軽には人前に曝せない感情が籠もるようになったかららしかった。 三谷がそれに気づいたのは、バグダッドの洋子の滞在先でテロが起きた時の蒔野の動揺と、一カ月以上沈黙があった後に、彼女の無事がわかってその喜びを爆発させた時の様子......
単語の意味
気軽(きがる)
籠もる・隠る・篭る・籠る(こもる)
気軽・・・1.面倒くさがったり気にしたりせずに行動するさま。身軽なさま。
2.飾ることなく、打ち解けやすいさま。
2.飾ることなく、打ち解けやすいさま。
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恋愛・恋する・恋心の表現・描写・類語(恋愛のカテゴリ)の一覧 ランダム5
何もかも振り捨てて私は生れて初めて恋らしい恋をしたのだわ。
林芙美子 / 新版 放浪記
嵐を好きになってから私は、恋というものを桜や花火のようだと思わなくなった。 たとえるならそれは、海の底だ。 白い砂地の潮の流れに揺られて、すわったまま私は澄んだ水に透けるはるかな空の青に見とれている。そこではなにもかもが、悲しいくらい、等しい。 目を閉じて走っても、全く違う所を目指したつもりでも、気持ちはいつの間にかくり返しそこへたどり着く。そこはいつもとても静かで、いつも彼の面影に満ちているので、私は目を覚ますことなく、ずっと、そこでそのまま眠っていたくなる。
吉本ばなな / うたかた「うたかた/サンクチュアリ」に収録 amazon
恋心の火は火力を調節できないからこそ尊い
綿矢 りさ / 勝手にふるえてろ amazon
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ゆっくりゆっくりと〝の〟の字を描く。乳首の先端の、たとえようもないほど狭い面積の上に、長原はいくつも、何十回となく〝の〟の字を描く。《…略…》長原の〝の〟の字は終って、今度は〝く〟の字だ。それは美登里の右の脇腹付近を何度も往復した。大胆さには、いつのまにか確信が加わっていた。
林 真理子 / ◦最終便に間に合えば林 真理子「最終便に間に合えば」に収録 amazon
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