嵐を好きになってから私は、恋というものを桜や花火のようだと思わなくなった。 たとえるならそれは、海の底だ。 白い砂地の潮の流れに揺られて、すわったまま私は澄んだ水に透けるはるかな空の青に見とれている。そこではなにもかもが、悲しいくらい、等しい。 目を閉じて走っても、全く違う所を目指したつもりでも、気持ちはいつの間にかくり返しそこへたどり着く。そこはいつもとても静かで、いつも彼の面影に満ちているので、私は目を覚ますことなく、ずっと、そこでそのまま眠っていたくなる。
吉本ばなな / うたかた「うたかた/サンクチュアリ」に収録 ページ位置:0% 作品を確認(amazon)
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前後の文章を含んだ引用
......のほとんど友達以前の範疇だ。そしてすぐに彼は遠い所に行ってしまった。だから、私にはまだこれが恋かどうかも本当にはわからない。さっぱり、わかっていない。 それでも嵐を好きになってから私は、恋というものを桜や花火のようだと思わなくなった。 たとえるならそれは、海の底だ。 白い砂地の潮の流れに揺られて、すわったまま私は澄んだ水に透けるはるかな空の青に見とれている。そこではなにもかもが、悲しいくらい、等しい。 目を閉じて走っても、全く違う所を目指したつもりでも、気持ちはいつの間にかくり返しそこへたどり着く。そこはいつもとても静かで、いつも彼の面影に満ちているので、私は目を覚ますことなく、ずっと、そこでそのまま眠っていたくなる。 でもそこだけは決してはき違えない。 私にとっては現実の嵐のほうがずっと大切だ。瞳を見開き、心に海を抱えたままで、嵐と生きてゆこう。 私の名は、鳥海人魚という。......
単語の意味
見とれる(みとれる)
覚ます・醒ます(さます)
見とれる・・・あるものに心引かれて、ぼーっと見る。素敵なものに我を忘れて見入る。「見惚れる・見蕩れる」とも書く。
覚ます・醒ます・・・意識をハッキリした状態に戻す。心や気分を正常な状態にする。
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