そういう迷信を信じる人間の無智に馬鹿馬鹿しさを感じないわけにいかなかった

派手好きなだけの頭のからっぽな俗物

地域のダストボックスと呼ばれている稲野原高校の生徒

痴呆（ちほう）のような甘いお人好しの観念

愚かで、滑稽で、哀れみを越えて、愛らしさすらあった。

雑多な思いが次から次へと現れたり消えてたりする

あとの句が出来ないと見えて、今度は筆を捨てて髭（ひげ）を捻（ひね）って見る。文章を髭から捻り出して御覧に入れますと云う見幕（けんまく）で猛烈に捻ってはねじ上げ、ねじ下ろしている

ある日、何かが僕たちの心を捉える。《…略…》二日か三日ばかり、その何かは僕たちの心を彷徨い、そしてもとの場所に戻っていく。……暗闇。僕たちの心には幾つもの井戸が掘られている。そしてその井戸の上を鳥がよぎる。

先生は、日に幾度も梯子（はしご）段を上ったり降りたりしている。まるで二十日鼠のようだ。

雑念を飲み込むように紙コップのコーヒーを一口飲み

陣治は信じられないほど不器用でだらしがない。一種の病気だ。便器を汚さずに小便もできない。洗面所に取り付けたタオルかけは斜めになってネジ山の溝が全部つぶれている。十和子でもできる簡単な組み立て椅子が、何時間かかっても組み上がらない。持って出た傘の半分以上は置き忘れてくるし、たとえ大切なことをメモしたとしても、たいていはそのメモを失くす。挙句には自分の 唾 を飲み込むのさえしくじって、しょっちゅう苦しげに噎せている。 　便器や、タオルかけや、椅子や、傘や、メモや、唾や、ともかく物という物と陣治との間には不可解な断絶がある。物たちは陣治を嫌っている。だから陣治が触れるとなんでも汚れる、なんでも壊れる、なんでも失くなる。

冷たいくらい怜悧な頭

来るものを片っ端からどんどんシステマティックに片付けていく

何をやらせてもほかの者たちを寄せ付けないところがある

そういう迷信を信じる人間の無智に馬鹿馬鹿しさを感じないわけにいかなかった