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二十七、八年も前で、ほとんど記憶の底に沈んでいて思い出しもしなかった
山田太一「飛ぶ夢をしばらく見ない」に収録 ページ位置:13% 作品を確認(amazon)
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忘れる・思い出せない・曖昧な記憶
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......音よ。というのがはじめの二行で」と私はいった。「そうでした」と女の声。 溲瓶を始末しながら、私は続けた。「くれてゆく岬の 雨の碇泊。」 不思議だった。読んだのは二十七、八年も前で、ほとんど記憶の底に沈んでいて思い出しもしなかったのに。「ゆれて、 傾いて、 疲れたこころに いつまでもはなれぬひびきよ。」 すらすらと続けられた。「人の生のつづくかぎり 耳よ。おぬしは聴くべし。 洗面器のなか......
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