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(ギター演奏)「郷愁」という副題を持つ第一楽章の内省的なプレリュードを、蒔野は、感傷を持て余して、時の流れの中で立ち往生しているような、躊躇いがちな性急さで演奏した。アルペジオのトップノートが、目の前の現実とかつての記憶とを、玉突きするように継いでゆく 謐 々 とした旋律。その足許で、なし崩しに過去へと 熔け落ちてゆく今。第二楽章の宗教的アンダンテは、荘厳なミサに託された祈りの行方を、聖堂の遥か彼方の天井の反響に探って、最後は 瞑目 するようなハーモニクスで、第三楽章のアレグロへと至る。
平野 啓一郎「マチネの終わりに (文春文庫)」に収録 ページ位置:29% 作品を確認(amazon)
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前後の文章を含んだ引用
......曲も敢えて弾かなかったが、ネット配信の動画でその様子を見ていたエコール・ノルマルの教授は、「今日は弾くんだろう?」と、リハーサルを覗きに来て、笑って声を掛けた。「郷愁」という副題を持つ第一楽章の内省的なプレリュードを、蒔野は、感傷を持て余して、時の流れの中で立ち往生しているような、躊躇いがちな性急さで演奏した。アルペジオのトップノートが、目の前の現実とかつての記憶とを、玉突きするように継いでゆく謐々とした旋律。その足許で、なし崩しに過去へと熔け落ちてゆく今。第二楽章の宗教的アンダンテは、荘厳なミサに託された祈りの行方を、聖堂の遥か彼方の天井の反響に探って、最後は瞑目するようなハーモニクスで、第三楽章のアレグロへと至る。蒔野の長い指は、速い旋律を惚れ惚れするほど正確に駆けた。彼がこのアレグロを弾き始めると、〝超絶技巧〟に対しては、断固として警戒せねばならないと信じている狷介な趣......
単語の意味
郷愁(きょうしゅう)
感傷(かんしょう)
瞑目(めいもく)
済し崩し(なしくずし)
躊躇(ちゅうちょ)
荘厳(そうごん)
郷愁・・・故郷を離れている人が故郷を懐かしく感じる気持ち。また、昔を思い出して懐かしく思う気持ち。ノスタルジア。
感傷・・・心を痛めること。心が感じやすく、傷つきやすいこと。
瞑目・・・1.目を閉じること。
2.穏やかに死ぬこと。
2.穏やかに死ぬこと。
済し崩し・・・ちょっとずつ片付けていくこと。少しずつ積み重ねて、最終的に全部処理する。じりじり。ずるずる。「そのときの雰囲気に任せて」などの意味はよく使われる誤用。
躊躇・・・気持ちに迷いがあって決断できないこと。ためらうこと。踏ん切りがつかないこと。
荘厳・・・宗教的な建物や儀式などの雰囲気が、おごそかで立派なこと。落ち着いた雰囲気の中に近寄りがたい立派さを感じるさま。
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演奏する・楽器を鳴らすの表現・描写・類語(動作・仕草・クセのカテゴリ)の一覧 ランダム5
(音痴)君には困るんだがなあ。表情ということがまるでできてない。怒 るも喜ぶも感情というものがさっぱり出ないんだ。それにどうしてもぴたっと外の楽器と合わないもなあ。いつでもきみだけとけた靴 のひもを引きずってみんなのあとをついてあるくようなんだ
宮沢賢治 / セロ弾きのゴーシュ
(バンドの演奏)腰骨に直接響く正確なリズム、突き上げるようなベース、走り出すギター、きらめくボーカル。感覚が痺れるようだった。
宮下 奈都「羊と鋼の森 (文春文庫)」に収録 amazon
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「動作・仕草・クセ」カテゴリからランダム5
よく発明コンクールで見る不器用な「自動ドア開け機」みたいだ。手もとから転がしたボーリングの玉がバケツをひっくりかえし、水が流れて、水車を回し……いろいろあって、ドアが開く。 風が吹いて、 桶屋が 儲かる。 わらしべで、長者になる。
吉本 ばなな「アムリタ〈上〉 (新潮文庫)」に収録 amazon
(困難な捜索作業は)太陽の射さない森を磁石もなく探索しているようなものだった。
小川洋子「博士の愛した数式 (新潮文庫)」に収録 amazon
ふ、ふと湯玉が上ってくるように笑いの玉がこみ上げて来て、大きな声で笑っていた。
向田邦子 / はめ殺し窓「思い出トランプ(新潮文庫)」に収録 amazon
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