いつのまにか、眠ってしまっていたらしい。電気が点いたままの部屋で、愛子はいま、自分が時計のどのあたりを浮遊しているのか分からなかった。

眠気に抗って起き上がる

（熟睡から起こされて）頭の中は大雨の中の水田みたいにひどく漠然として、見極めがつかなかった。シーツにはまだ午後のセックスの記憶がかすかに残っていたし、カーディガンのボタンを掛け違えたみたいに、すべての物事が一段階ずつ現実との接点を失っていた。

朝になったことを知るより先に、雨が降っていることに気づき、鯨は目を覚ました。

目覚めは突然だった。 　電気をつけるように、ぱちり、と目が覚めた。

地獄の底でもさ迷うような息苦しい眠り

肩を揺すって起こすと、男は猫のようにからだを伸ばして、手の甲で目をこすり、ブルブルッと顔を横に振る

寝返りをうつとベッドがわずかにぎしりと音を立てる。

敷布団の上に、ふたりは二個の直線でしばらくそうしていた。

眠りの浅瀬にただ打ち上げられたように横たわっていた。